「これから」の社会がどうなっていくのか、100年時代を生き抜く私たちは、どう向き合っていくのか。思考の羅針盤ともなる「教養」を、講談社のウェブメディア 現代ビジネスの記事から毎回ピックアップしていきます。
漫画家の折原みとさんは、ふとしたきっかけからドッグカフェの経営を始めるも、5年で閉店。夢が一転、地獄と化した顛末を、全3回にわたってお届けます。

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 「飲食店経営に手を出して地獄を見る人の『三つの共通点』」

そんなタイトルに惹かれてこの記事を読んだ瞬間、思わず吹き出してしまった。年始に、何気なく現代ビジネスのサイトを覗いていた時のことだ。

「これ、私のことじゃん!」


10数年前の苦い思い出とは


本業は、漫画家兼小説家の私だが、10数年前、無謀にもカフェ経営に手を出し、4年半で店を潰した経験があるのだ。
 
2004年から2007年の秋にかけて、八ヶ岳の麓、長野県富士見高原で営業していたドッグカフェ「八ヶ岳わんこ物語」。その時の失敗体験を思い起こすと、まさに、この記事の「三つの共通点」に当てはまる。

さすが! 経営のプロの考察は的確だ。
 
まったくもって、素人が飲食店経営なんかに手を出すものじゃない
料理やインテリア、接客の好きな人が、自分の店を持ちたいと思う気持ちはよくわかる。だけど現実は甘くない!

夢見るみなさんが地獄を見ることのないように、私のしくじり体験を読んで欲しい。

*       *       *

.「ウチの隣のログハウスが空いてるんだけど、お店でもやらない?」

知り合いの不動産屋さんからそんな話をもちかけられたのは、2003年の秋のことだった。その4年前、八ヶ岳に別荘を建てたときにお世話になった方だ。モデルハウスのログを遊ばせておくのはもったいないので、店舗として賃貸に出したいと言う。
 
2階建てのログハウスは床面積50坪にデッキスペースが30坪。駐車場150坪と広い庭もついて、家賃はわずか10万円。

「安い‼」と思った。都会の相場に比べたら、それだけの広い物件ではありえない安さだ。別荘地の真ん中を走る道路に面しているので立地もいい。この近所に飲食店はほとんどなく、ログハウスの向かいに、お値段高めのステーキハウスが一件あるだけだ。

このあたりで、もっと軽く食事やお茶ができる店があれば、結構流行るのではないだろうか?

 

 当時、私は「リキ丸」というゴールデンリトリバーを飼っていたが、常々、リキと一緒に入れるお店が近くにあればいいのにと思っていた。今ほどではなかったが、ペットブームの走りで、犬連れで高原に遊びに来る人も増えていた。
 
そうだ、ドッグカフェだ‼ 人間もわんこもゆったり寛げる、高原の素敵なドッグカフェ。イケる‼ これは絶対イケるに違いない‼ 

そう思いこんだら、もう夢と妄想が止まらなかった。よく言えば「行動力がある」、悪く言えば「考えナシ」の私は、高原のドッグカフェ経営に向かって猛然と突っ走った。

漫画家の私が「憧れのカフェ経営」で味わった、甘くない現実_img0これがログハウスをドッグカフェにした「八ヶ岳わんこ物語」写真提供/折原みと

その先に、何が待ち受けているのかも知らずに……。