「これから」の社会がどうなっていくのか、100年時代を生き抜く私たちは、どう向き合っていくのか。思考の羅針盤ともなる「教養」を、講談社のウェブメディア 現代ビジネスの記事から毎回ピックアップしていきます。
今回は漫画家・折原みとさんのカフェ経営失敗談、最終章。犬と飼い主の幸せな笑顔が見たい、そんな気持ちから始めたドッグカフェ。しかし現実には、“お客様は神様”なんて言ってられない現状と“経営者責任”の恐怖が待っていました……。
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かつて、漫画家のくせにカフェ経営に手を出し、4年半で店を潰したことのある私。
八ヶ岳の高原で経営していたドッグカフェ「八ヶ岳わんこ物語」での体験を、2回に渡って書かせていただいたが、今回はその最終章だ。
第1回『漫画家の私が「憧れのカフェ経営」で味わった、甘くない現実』はこちら>>
第2回『夢のカフェ経営で直面した“人”の壁。問題はお金だけじゃなかった!』はこちら>>
飲食店は接客業。資金面、雇用面と並んで、カフェといえば「接客の苦労」は外せない。リゾート地のドッグカフェ「八ヶ岳わんこ物語」のお客さまは、大半がわんちゃん連れの観光客。空気のいい高原で、ゆったりのんびり愛犬との時間を楽しみに来る方たちに加えて、時には私の本業の読者の方たちも来てくださっていたので、店の雰囲気はとてもほのぼのとあたたかなものだった。
が、そんな高原のパラダイスにも、時にはちょっとしたトラブルが巻き起こることもある。
おしっこをかけられても笑顔で
ウチの店では、わんちゃん連れのお客さまに、愛犬と一緒にチェキで写真を撮るというサービスをしていた。写真は、お客さまの許可をいただいて店内のボードに貼らせていただく。わんちゃんとお客さまの笑顔の写真がどんどん増えて行くのが、オーナーの私の楽しみでもあった。
しかしある日のこと、いつものようにお客さまの記念撮影をすると、可愛い小型犬連れのお客さまは、不満そうにこうおっしゃる。
「うちの子の写りが悪いわ。撮り直してくれる?」
チェキのフィルムは、1枚80円くらいする。客単価が500円~1000円くらいのカフェでは、もともと採算度外視のサービスだ。でも、撮り直した写真にも、お客さまは納得して下さらない。
結局、何枚か撮り直した挙句、
「うちの子、こんなにブサイクじゃないわ!失礼な店ね!!」
と、お客さまは怒って帰ってしまわれた。
ぽか~~ん……。
接客業に従事している方なら、こういう困ったお客さまに遭遇したことは必ずあるのではないだろうか?
幸い、私はあまり酷いクレーマー客に出くわしたことはないが、ドッグカフェだけに、ルールを守らないお客さまに頭を悩ませたことは度々ある。ウチの店では、原則的に犬にはリード着用をお願いしていたが、それを守ってくれない方も中にはいるのだ。 そういう飼い主さんは、注意をしてもたいてい聞く耳を持たない。
「うちの子はお利口だから、大丈夫よ~」と言われてしまうと、それ以上強く言えないのが客商売の辛い所だ。
ドッグカフェでは、わんちゃんが店内でオシッコをしてしまうことも珍しくない。できれば、店に入る前にオシッコをさせておいていただけると嬉しいのだが、その始末もホールスタッフの重要な仕事だ。
「ごめんなさいね」と申し訳なさそうに謝ってくれる方もいれば、スタッフが掃除をするのが当然とばかりに知らん顔の人もいる。時には、漫画みたいにチ〜〜と足にオシッコを引っかけられることもあるが、ニコニコと笑っていなければならない。
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