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産婦人科医とAV男優が考えた「学校ではできない本当に必要な性教育」とは?

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デートDVや性的同意。
試行錯誤を重ねた新しい概念の伝え方


そうして制作された動画とガイドブックには、隅々にまでこだわりが。まず、項目の立て方から特徴的。ガイドブックでは「オトナのはじまり」(第二次性徴)の後に「性教育の“性”とは?」という章が。その後「生殖」へと続きます。

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イクということや性癖など“快感”について触れているのも森林さんならでは。「身体の快感も大事。愛とセットのセックスはもちろん素晴らしいけど、それを全面に出し過ぎると快感を求めることに罪悪感を覚えてしまうので注意が必要です。」

「僕自身、あらためて“性”ってなんだろう? と考えました。生まれ持った身体と心は必ずしも一致しないし、社会から押し付けられた男らしさ、女らしさを守らなきゃいけないわけでもない。まずは、性ってもっと自由だということを感じてもらった上で、男子も女子も当事者意識をもって、生理や射精、妊娠や避妊のことを学んで欲しかったんです」

 

また、特に力を入れたトピックは、森林さんの原点でもある「AV」の他に「デートDV」と「性的同意」。

「『デートDV』と『性的同意』は新しい概念なので、さまざまな角度からわかりやすく伝えようと。コテコテの実例をドラマにしたり、様々な世代や性別の人にディスカッションしてもらったり。上村先生がデートDVのご専門だったので、厚みのある内容になっていると思います」

ガイドブックによると、デートDVとは、恋人同士の束縛や要求を含んだ約束がエスカレートし、常にどちらか一方が苦痛を感じるようになっていくこと。そして相手が要求を飲めなくなると、肉体的、精神的苦痛を与える暴力が起こります。

「難しいのは、恋人間の束縛は愛情表現のようにも感じられてしまうこと。僕も『デートDVに繋がる約束と愛情表現は何が違うのか?』については、先生に何度も質問しました。先生から教えていただいた定義は『その約束をすることによって相手の能力を制限することになる場合は、デートDVである』というもの。たとえば、彼が彼女に『男性とふたりきりになる仕事はするな』と約束させたら、大事な仕事を逃すことになってしまう可能性も。そういったケースは、デートDVと呼んで構わないということでした。

さらに僕は、“それは誰のための約束か?”ということにフォーカスすると線引きしやすくなると考えます。つまり『自分が不安だから』『自分が寂しいから』という理由による約束は、デートDVになりやすい。とりわけ、まだつき合うこと自体に慣れていない思春期の頃は、約束する方もされる方も愛情と束縛を混同しがち。だからこそ、境界線の定義を知識として持って、自分の状況がデートDVかどうか判断できるようになることが大事です。また、デートDVのもうひとつの特徴は、本人たちが気づきにくいこと。子どもや友人の話を聞いた際に、疑問を持ち、助けてあげるためにも、当事者だけでなく誰もがこの知識を得ておくことが重要なんですよ」

「そして、デートDVに陥らないためには、『イヤ』と言えるようになることが肝心。特に、幼い頃から周囲に合わせるように躾けられてきた女性は訓練が必要です。理想は、幼い頃から日常的に『イエス』と『ノー』を選ぶ習慣をつけておくこと。また、『イエス』と『ノー』を自分のなかに明確に持つことは、性的同意にも繋がっていきます」