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【正しいマスターベーションのやり方】を子供に教えるには?泌尿器科医に聞いてみた

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なかなか他人には相談しにくい、性にまつわる悩み。病院に行くほどでもないし、ネットで検索してもなかなか信頼できる答えも見つからない。
そこで寄せられたお悩みを専門家や医師に、答えてもらいました。
 

Q. 子供に教えられる正しいマスターベーションのやり方を、私自身知らずに今に至ります。ぜひ教えてください。
 

(30歳・女性)

 


女性泌尿器科専門医・関口由紀先生の回答

A. マスターベーションに正しいという方法や基準はありません。
“悪いもの”と教えることではなく、女性も罪悪感を持たないで。


幼児でも自然に性器に触る子はたくさんいます。女の子の場合であれば、性感帯は乳房周囲、クリトリス、Gスポット、子宮膣部の後ろ(ポルチオ)の4つ。このそれぞれのゾーンには神経末端が集まっているので、医学的にも性感帯と言われています。自分で触ってやさしく刺激することで、気持ち良い感覚を得るのは自然な行為でしょう。海外では、マスターベーションについては、「人前ではやらない」「人を傷つけない」「自分を傷つけない」という3原則は、親が子どもに教えているようです。この3原則はセックスにも通じる大事な基本です。これさえ守ればあとはご自由に。性的志向は教育ではどうにも変えられないものです。

 


ただし、男女とも最初のマスターベーションから道具を使うのは刺激が強すぎるのでオススメできません。たとえば、ペニスを床にこすりつけるマスターベーション(プッシュ法と呼ばれています)は、日本性機能学会でも「女性との交渉の際に射精障害の原因になる」とリスクを警告しています。誤ったマスターベーションでの強すぎる刺激は感度を下げてしまうのです。

また、好奇心から、さまざまなものを膣や肛門に挿入する行為もとても危険です。スニーカーの紐、電球、ビール瓶など、信じられない、笑えないようなケースは未だに多くあります。本来は常識が働く範囲ですが、どこかのタイミングで注意を促す教育があれば、防げる問題かもしれません。加えて注意していただきたいのは、エロチックな画像情報に簡単にアクセスできてしまう環境です。小学生の段階で情報にさらされないよう、保護者が制限するのは当然だと思います。実際にAVの影響で初交渉から過激な行為で問題を起こす若年層が増えていますし、マスターベーションのおかずの1位がスマホになっているのは現実です。

マスターベーションは悪いイメージが強いかもしれませんが、リラックスや幸福感をもたらす効果があります。女性ホルモンの状態や自律神経を安定させて、疲労感をやわらげ、ストレス発散も期待できます。マスターベーションのしすぎは「バカになる」というのは嘘です。マスターベーションで自分自身の気持ち良いポイントが分かれば、セックスで自ら好みの体勢にもっていくこともできますので、大人の女性も罪悪感を持つことなく楽しんでください。

関口 由紀(せきぐちゆき)

日本では数少ない女性泌尿器科専門医。「女性の身体は、全身的に診ていく必要がある」と、婦人科、女性泌尿器科、内科、漢方内科、乳腺科、皮膚科、美容皮膚科、などを揃えた女性医療クリニックLUNAグループを横浜と大阪に展開中。 『女性医療クリニックLUNA(横浜元町)』は、2018年9月にリニューアルオープン。心身の悩みを抱える女性の相談窓口として、わかりやすさを重視。フロアごとに生殖年齢と更年期以降とに外来が分けられている。2F:女性医療クリニックLUNA横浜元町は生殖年齢女性向けの健康管理中心。3F:女性医療クリニックLUNA ネクストステージは更年期以後の女性の美と健康をサポートする攻めの抗加齢医療を行っている。


取材・文/熊本美加
構成/片岡千晶(編集部)


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