オリンピックに向けて走り込む金栗四三(中村勘九郎)と、人力車を引いた美濃部孝蔵(森山未來)が日本橋の真ん中ですれ違う。
第六回 「お江戸日本橋」 演出:西村武五郎
あらすじ
世界に通じる“韋駄天”をみつけたものの、ストックホルムオリンピックに実際に連れていくことは容易ではなかった。マラソン世界記録を打ち立てながら、オリンピック参加を断る金栗四三(中村勘九郎)に、嘉納治五郎(役所広司)は困惑。そのうえ、渡航予算が足りない。 一方、その頃、橘家円喬(松尾スズキ)に弟子入りした美濃部孝蔵(森山未來)は、師匠を人力車に乗せながら、身体にその芸を染み込ませていた。

一瞬の邂逅と打ち上げ花火


第六話は、なんといっても、ラスト近く、四三と孝蔵が、左右から走って来て、日本橋の真ん中ですれ違った瞬間、橋の向こうで大きな花火が何連発も上がるところ。
ストックホルムの道の石畳に慣れるため日本橋を走る四三と、落語は脚で覚えるのだと師匠に言われ、噺の内容を身体で実感しようとする孝蔵、己の身体に情報を叩き込んでいるふたりの、一瞬の邂逅。超絶エモい場面でありました。

 

勘九郎さんも森山さんもかっこいい。なんたってどちらも、幼少の頃から芸事を身に着けてきています。勘九郎さんは歌舞伎界で踊りの巧さに定評があるうえ、今回、マラソン選手としての筋をつけて臨んでいます、森山さんは俳優のみならずダンサーですから、ドラマのなかでちょっとした動きのなかにもしなやかな筋肉を感じさせます。そのふたりが交錯するときの、緊張感といったら……! 
人力車は重さ80キロもあるそうですよ。松尾スズキさんが乗ったら、100キロ超えちゃいますね。すごい……。

もうひとつ気になるのは、日本橋。いまの日本橋は高速が上を通っているし、いったいこれ、どうやって再現したのだろう? 茨城ワープステーションにもこんな大きな橋はなかったし……と気になったとき、思い出しました。2018年の3月31日に放送された「いだてん 助走〜2019年大河ドラマ制作記〜」。ここで、「シン・ゴジラ」(16年)の准監督をつとめ、数々の映画の特技監督もやっている尾上克郎さんが、VFXアドバイザーとして、当時の日本橋のサイズはホンモノの18分の1、畳80畳ほどの大きさを目指してミニチュアを作っている様子が紹介されていました。資料が残っているので、嘘がつけないと、寸法から装飾デザインに至るまで設計図から資料を調べ上げていると語っていました。
ってことは、あのエモい場面は、18分の一サイズの日本橋のミニチュアと、俳優の映像を組み合わせ、さらに花火をプラスした、VFX技術の粋を尽くした場面だったといえそうです。いつか公式でメーキングが紹介されることを待ちたいと思います。

 
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