どんなに電子書籍が便利だろうと(もちろん、便利だから使ってはいるんですけれど)、やっぱり私は「紙の本」が好き。たぶん、文字情報としての価値だけじゃない魅力を求めてしまっているのです。
というわけで、最近の「だって、こんな本に出会ってしまったら、恋に落ちるしかないではないですか!」な2冊を紹介します。
「すべての、白いものたちの」ハン・ガン
とにかく美しい! こんなに美しい装丁はしばらくお見受けできなかったと、ちょっとふるえてしうほどの佇まい。たくさんの本の中で、ひときわ後光が射して見えたのです。いや、本当に大袈裟ではなく。この本では、文章の情感に寄り添うように、「白」の奥行きが表現されています。とにかくそれぞれの紙のテクスチャーも良く……先日の情熱大陸で京都の老舗料亭・菊乃井の巨匠が自身の料理では「香り、テクスチャー、WOW(驚き)」を込めていると言っていたのですが……色の持つ密やかな「香り」、紙の持つ繊細な「テクスチャー」、だからこその、まさに「WOW」!! な一冊であります。
「My Little New York Times」佐久間裕美子
「さっすが、佐久間さん、スタイリッシュな本だな〜」なんて書店で手にしたのですが、よくよく見ると、ディテールが本当に凝っていてビックリ。SNSにて、出版元であるNUMA BOOKS内沼さんが装丁のこだわりを綴られていたのを発見。「①新聞風に見せるため、小口を削っている。②この行程を本体と表紙をつけた後におこなっているため(=表紙を一緒に削ってしまわないように)、表紙の幅が少し短くなっている。読んでいるうちに、よれてきても、それがより新聞風な風合いに近づくのでは、とも思っている。③写真をシール貼りして、その上から金の箔でタイトル文字が入っている……などなど。これほどまでにこだわられて作られた本というものは、自ずと書店で「ただものでない感」を発してしまうものなのだな〜、と。
装丁に愛が注がれている本。その愛を自分でしっかり感じ取れた本は、自分にとって間違いなく内容もおもしろいという法則が成り立つという事実(大森調べ)。
だから、私の場合、装丁に愛を感じたら「買い」。
出版社の裏事情を言ってしまっては実も蓋もないのですが、凝った装丁というのは、それだけコスト高になり、売り上げ、そしてもちろん利益率に影響します。でも、「この作家の本は値段じゃない。いかに愛をかけたかがファンにとってとっても重要なんだ! ファンはそれを待っている!!」という強い信念が担当編集者にあれば、このような奇跡の一冊が出来上がるのだと思います。
先日、2019年のアカデミー賞が発表されました。監督賞と撮影賞を受賞した『ROMA/ローマ』は、「そのテーマ(メキシコ人監督・キュアロンの幼少期の記憶)では客は入らない。絶対に採算に合わない」と映画制作会社からGOサインをもえらなかったといいます。そこで、ネットフリックスに話をもちこみ、配信作品として制作することに。結果的に、作品は高く評価され、賞を受賞することに(劇場公開していたら、アカデミー会員最大の取引先とも言える映画館への配慮は必要ないので、「作品賞もとれていたはず」とも言われています。ちなみに、現時点では映画館側が今作の劇場公開を拒んでいるそうです)。
ビジネスですから、採算は大切。でも、それだけを重視しすぎていては絶対に生まれない価値があるのだとも思います。
あれ、装丁について書いていたはずなのに、なぜか、急にそんなことを思ってしまいました(苦笑)。
今日のお品書き
もゆるさんが、来秋・冬にくるであろうビッグトレンドを大予測(やっと春になるところだと言うのに、ファッション業界は気が早いですね~)! 注目したのは、ニューヨーク・コレクションから見つけたフィリップ・リムのフリースのアウター。マックスマーラのテディベア・コートに続けるか!?
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