どんなに電子書籍が便利だろうと(もちろん、便利だから使ってはいるんですけれど)、やっぱり私は「紙の本」が好き。たぶん、文字情報としての価値だけじゃない魅力を求めてしまっているのです。

というわけで、最近の「だって、こんな本に出会ってしまったら、恋に落ちるしかないではないですか!」な2冊を紹介します。

すべての、白いものたちの」ハン・ガン

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2016年にブッカー賞国際賞を受賞している、現代韓国最大の女性作家の最高傑作と謳われているコチラ。韓国だけでなく、日本でもベストセラーとなっている『82年生まれ、キム・ジヨン』の訳でもおなじみの、斎藤真理子さんによる訳も素晴らしく、翻訳本ではあまり味わえたことがない情感がたっぷり。おくるみ、うぶぎ、しお、ゆき、こおり、けむり……白をテーマに紡がれた、まるで詩集のような一冊。「すべての、白いものたちの」/ハン・ガン

とにかく美しい! こんなに美しい装丁はしばらくお見受けできなかったと、ちょっとふるえてしうほどの佇まい。たくさんの本の中で、ひときわ後光が射して見えたのです。いや、本当に大袈裟ではなく。この本では、文章の情感に寄り添うように、「白」の奥行きが表現されています。とにかくそれぞれの紙のテクスチャーも良く……先日の情熱大陸で京都の老舗料亭・菊乃井の巨匠が自身の料理では「香り、テクスチャー、WOW(驚き)」を込めていると言っていたのですが……色の持つ密やかな「香り」、紙の持つ繊細な「テクスチャー」、だからこその、まさに「WOW」!!  な一冊であります。

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端正に仕上げられていない、ザックリと断裁された粗野さに漂うデカダンス。
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純白では表現できない無限を感じる白の世界。
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カバーをとっても美しい。ちなみに、ハングルは「白い」の意。
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見返しと扉の間に、もう一枚、違う「白」を。艶のあるしおり紐も色っぽい。ウットリ♡


My Little New York Times」佐久間裕美子

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ミモレでも以前インタビューをさせていただきました佐久間裕美子さん。発信されている情報のフレッシュさ、深い洞察力、そして素晴らしき人間力にいつも関心してしまいます。そのNY在住20年の佐久間さんが、ドナルド・トランプ大統領就任をきかっけに激動するアメリカ、日本、世の中の流れへの思いと、その日常を綴られた一冊です。この本の下地となっている、佐久間さんが公開されている日記もオンライン上では読んでいたのですが、改めて本になると知り、昨年末、発売と同時に購入。一気読みしてしまいました。オンタイムで読んでいた感覚とは、また違う思いで読むことができました。佐久間さんの目を通して世界の流れが見えてきます。「My Little New York Times」/佐久間裕美子

「さっすが、佐久間さん、スタイリッシュな本だな〜」なんて書店で手にしたのですが、よくよく見ると、ディテールが本当に凝っていてビックリ。SNSにて、出版元であるNUMA BOOKS内沼さんが装丁のこだわりを綴られていたのを発見。「①新聞風に見せるため、小口を削っている。②この行程を本体と表紙をつけた後におこなっているため(=表紙を一緒に削ってしまわないように)、表紙の幅が少し短くなっている。読んでいるうちに、よれてきても、それがより新聞風な風合いに近づくのでは、とも思っている。③写真をシール貼りして、その上から金の箔でタイトル文字が入っている……などなど。これほどまでにこだわられて作られた本というものは、自ずと書店で「ただものでない感」を発してしまうものなのだな〜、と。

  • 装丁萌え! 「本は紙じゃなきゃ」派の言い分 その①_img10 こちらが小口です。表紙も短いですね。
  • 装丁萌え! 「本は紙じゃなきゃ」派の言い分 その①_img11 シールが貼られているの分かりますか?
  • 装丁萌え! 「本は紙じゃなきゃ」派の言い分 その①_img12 本文中は、参照ニュースはQR表示にて。本当に便利。スマホ片手にどうぞ! 


装丁に愛が注がれている本。その愛を自分でしっかり感じ取れた本は、自分にとって間違いなく内容もおもしろいという法則が成り立つという事実(大森調べ)。

だから、私の場合、装丁に愛を感じたら「買い」。

出版社の裏事情を言ってしまっては実も蓋もないのですが、凝った装丁というのは、それだけコスト高になり、売り上げ、そしてもちろん利益率に影響します。でも、「この作家の本は値段じゃない。いかに愛をかけたかがファンにとってとっても重要なんだ! ファンはそれを待っている!!」という強い信念が担当編集者にあれば、このような奇跡の一冊が出来上がるのだと思います。

先日、2019年のアカデミー賞が発表されました。監督賞と撮影賞を受賞した『ROMA/ローマ』は、「そのテーマ(メキシコ人監督・キュアロンの幼少期の記憶)では客は入らない。絶対に採算に合わない」と映画制作会社からGOサインをもえらなかったといいます。そこで、ネットフリックスに話をもちこみ、配信作品として制作することに。結果的に、作品は高く評価され、賞を受賞することに(劇場公開していたら、アカデミー会員最大の取引先とも言える映画館への配慮は必要ないので、「作品賞もとれていたはず」とも言われています。ちなみに、現時点では映画館側が今作の劇場公開を拒んでいるそうです)。

ビジネスですから、採算は大切。でも、それだけを重視しすぎていては絶対に生まれない価値があるのだとも思います。

あれ、装丁について書いていたはずなのに、なぜか、急にそんなことを思ってしまいました(苦笑)。

今日のお品書き
もゆるさんが、来秋・冬にくるであろうビッグトレンドを大予測(やっと春になるところだと言うのに、ファッション業界は気が早いですね~)!  注目したのは、ニューヨーク・コレクションから見つけたフィリップ・リムのフリースのアウター。マックスマーラのテディベア・コートに続けるか!?