起業したい夫への「嫁ブロック」はどんどんやった方がよい理由_img0
 

転職や独立、起業を考えている既婚男性に対して、妻が反対して阻止することを、俗に「嫁ブロック」と呼びます。企業の人事部が中途採用で内定を出しても、妻の反対を理由に辞退するケースは珍しくありません。「パートナー」によるブロックではなく「嫁」ブロックになるあたりが何とも日本的ですが、家族制度の感覚がまだ一部には残っていますから、「嫁」になってしまうのも仕方ないのかもしれません。

それはともかく、一般的に嫁ブロックという言葉には、夫のキャリア・アップを阻むというネガティブなニュアンスが含まれているように思います。しかし筆者の考え方はまったく逆で、キャリア論などで取材を受けるたびに「どんどん嫁ブロックはした方がよい」と喧伝しています。

その理由は、嫁ブロックを突破することは、転職や独立、起業におけるスタートラインに立つための「最初の関門」だからです。特に独立と起業の場合、この関門を超えられないようでは成功を収めることは現実的に難しいですから、腕試しにはぴったりのテストです。

ちなみに筆者はサラリーマン時代に1回転職し、その後、起業しています。一連の経験から言えることは、転職や独立、起業を成功させるためにもっとも重要なスキルは、異なるカルチャーの世界で、自分自身を他人に理解してもらう能力です。
特に独立、起業ということになると、サラリーマン時代にどんなに豊富な実績や人脈を積み上げても、それはすべて会社を看板にしたものですから、ほとんど役に立ちません。

相手の企業にしてみれば、出来たばかりで実績はゼロ、明日にもつぶれるかもしれない会社ですから、よほどの理由がなければ取引しません。採用する従業員にとってもそれは同じことです。独立、起業した本人は、大きな夢やビジョンを持っているわけですが、その会社に応募する人にとっては、ただの得体の知れない会社です。これは自分が設立されたばかりの会社に転職することを考えれば容易に想像がつくでしょう。こうした状況で取引先を開拓し、人を採用するためには、独立、起業した本人に相当な説得力が必要となります。

転職の場合には、独立、起業ほどシビアに考える必要はないと思いますが、それでも異なる社風の会社に行けば、多少の行き違いは生じます。転職者に対しては一般的に期待値が高いですし、場合によってはやっかみもありますから、やはり相応のコミュニケーション能力がないと、新しい職場で実績を上げるのは難しいでしょう。

 
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