アメリカの裏口入学事件で逮捕された女優のフェリシティ・ハフマンと夫で俳優のウィリアム・メイシーと二人の娘。写真:ZUMA Press/アフロ


長女の試験に「替え玉」を使用!
私生活も「デスパレートな妻」を地で行く


2019年3月、ドラマ『デスパレートな妻たち』への出演で知られ、『トランスアメリカ』でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたこともある実力派女優フェリシティ・ハフマンと、『フラーハウス』のレベッカ役で有名なロリ・ロックリンが相次いでFBIに逮捕された。容疑は子どもを名門大学に裏口入学させたこと。

 

FBIは長年、裏口入学組織のリーダーとしてウィリアム・リック・シンガーという人物を追っていた。シンガーは自ら主宰する慈善団体に寄付金を支払わせる手法で、2011年から2018年にかけて約2500万ドルを得ていた。この団体のリストにハフマンとロックリンの名が記録されていたことから罪が明らかになったのだ。

ハフマンは1万5000ドルをシンガーに支払って、長女のSAT(日本の大学入試センター試験にあたる)に替え玉を使用。これによって娘の南カリフォルニア大学(USC)進学を成功させていた。

ロックリンのふたりの娘イザベラとオリヴィアの進学先も同じUSCだったが、やり方はさらに悪質だった。シンガーは多くの名門大学の運動部コーチと賄賂コネクションを築いていた。その中のひとりにUSCのボート部のコーチがいた。このパイプによって、ロックリンの娘たちは高校時代にボート部で大活躍していたことが偽装され、USCにスカウト入学扱いで入学していたのだ。もちろん彼女たちはボート部になんか入部しなかった。オリヴィアに至ってはインフルエンサーとしての活動に打ち込むあまり授業にも出ていなかったらしい。一連の工作に対してロックリンは50万ドルを支払ったと言われている。

こうした裏口入学の横行には、アメリカの名門大学間の過酷な競争がある。教育機関として世界一を目指すアメリカの大学は教育環境の投資に金を惜しまない。最新の研究設備はガンガン買うし、教職員も沢山雇う(ハーバード大学の教員と生徒の比率は1:7だ)。才能ある生徒を集めるために全生徒の約2割は授業料免除で入学させてしまう。これによって生じる多額の出費を賄うために授業料は高騰。現在、子どもを通わせると1年間で約6万ドル(寮費込み)も支払わなければいけない。つまり勉強が出来る普通の生徒の親にしたって相当な資産家なのだ。

 
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