たとえば、来客があったときに、おもてなしするためのティーカップ。ほぼどこのご家庭にある、エレガントなイギリスの陶磁器のブランド。それが私のウェッジウッドに対するイメージでした。
タイムレス・ラグジュアリー。
時代を超えてなお(なんと今年で創業260年!)、世界中で愛され続けている理由をさぐるべく、今春、ウェッジウッドの本社があるイギリスの陶磁器で有名な街ストーク・オン・トレントに赴きました。
本社の横には、美術館やフラッグシップストアやティーサロンを備えたワールド・オブ・ウェッジウッドが。休日ともなると、たくさんの方が訪れる人気スポットです。まずは、約8万点の美術作品を所蔵するウェッジウッド美術館へ。1日たっぷり見ても時間が足りないほどのアーカイブ量。イギリスの食文化を通して見えてくる生活や生活様式のトレンドなど、いろいろな角度を読み解くことができ、とても興味深かったです。
ちなみに、皆様がウェッジウッドと聞いて思い出すシリーズは何でしょうか? 私は、ワイルド ストロベリー シリーズです。今年は記念すべき260周年ということで、ゴールドが装飾されたワイルド ストロベリー ゴールドが発売されるとのこと。本社で、そちらのデザインを担当したデザインチームのチーフのアンジェラさんとデザイナーのグウィンさんにインタビューさせていただく機会にも恵まれました。
「陶磁器にまつわる技術はもちろん、たくさんのデザインの貴重なるレガシー(遺産)を抱えているのがウェッジウッド。それを尊重しながら、どうチェンジさせるべきかをいつも重視してデザインするようにしています。“トラディショナルなのに、新しい”。そう思っていただけるデザインは何なのか、をいつも意識しています」(アンジェラさん)。
「そう! 私たちデザインチームは、レガシーとイノベーションのバランスを考えながら、STEP AHEAD(一歩先へ前進)することが大切だと思っているの」(グウィンさん)。
デザインルームがある本社近くにある、先ほど紹介したウェッジウッド美術館に行けば、2世紀半前のパターンブックを見ることもできる環境にあります。
「信じられないくらいのデザインソースがアーカイブされているの。それらを見ながら、新しいアイデアを生み出しているの」(グウィンさん)。
「中でもワイルドス トロベリーは特別なパターンだわ。ワイルドストロベリーという果実は英国人にとって、とてもスペシャル。ウィンブルドンやピクニック、ストロベリー・シャンパンなど、楽しいサマータイムを喚起させてくれるの」(アンジェラさん)。
「“パーフェクションラブ”という意味があるのよね!」(グウィンさん)
世界中で愛され、愛好家が多いワイルド ストロベリーシリーズ。今回の260周年記念シリーズのデザインのポイントを聞いてみると……。
「ゴールドを使っている他に、このシリーズだけ、モンシロ蝶を飛ばしたのよ。器の裏面のバックスタンプやボックスなど、いろいろ仕掛けをしたので、それも楽しんでいただけたら、とっても嬉しいです」(アンジェラさん)。
イギリスではポーセリン(陶石)がとれなかったため、牛骨を使った堅牢性の高いファイン ボーン チャイナ(だから、“ボーン”チャイナだったのかと今更知りました照!)が誕生したのだと言います。だから、ウェッジウッドの器は一見繊細そうに見えて、かなりタフなのか、と大興奮してしまいまいました(笑)。
その後、ファクトリーツアーの見学も。絵付けやライニング(手描きで線を描く装飾技術)、釉がけ、型作り、窯焼き……本社と工場が隣接しているからこその密な連携が可能に。だからこそ、ジョサイア氏の魂を全員で共有し、グローバル企業となりながらも、熟練の職人さんと一体となった商品づくりが可能になっているのだな、と。
駆け足でウェッジウッドの魅力を紹介してしまいましたが、いかがでしたでしょうか?
私は、今回の取材を通し、ウェッジウッドがなぜこんなにも長い間、世界中で愛されているのかという理由の一端を垣間みることができました。そして、自分が普段何気なく使っているモノの価値をもう一度見直すキッカケとなりました。
たとえば、一杯の紅茶。
ただ、喉の乾きをいやすためではなく、自分の心をホッとさせたり、満たしたり、休ませたり……そのティータイム自体を慈しめるように。
誰かを大切に思うために、まず自分を大切にしてあげる。毎日そんなふうにティーカップを選びたいと思います。
お問い合わせ先/フィスカース ジャパン
Comment