「自律神経」や「腸」など、健康に関する数々のベストセラー本を手がける、順天堂大学医学部の小林弘幸教授。小林教授によると、病気を寄せつけず、いくつになっても元気な“病に嫌われる人”には、必ず毎日コツコツと続けている習慣があると言います。
そんな習慣の代表が“朝起きたらコップ1杯の水を飲むこと”なのだとか。これがなぜ健康につながるのか、『病に好かれる人 病に嫌われる人』の著者である小林教授に伺いました。
朝のコップ1杯の水が腸の動きをよくし、自律神経も整える
病に嫌われる人が、毎朝必ず行っていること。そのひとつが、朝起きたときコップ1杯の水を飲むことです。
これは、私も毎朝続けている習慣です。
水を飲むという行為は、私たちの体にとても大きな影響力をもっていて、飲むタイミング次第で、体の機能を高めることができます。
そして必ず飲んでいただきたいタイミングが朝です。
朝起きたときに水を飲むことは、寝ている間に失われた水分を補給するうえで大切なのですが、さらに重要なのは、「胃結腸反射」を誘導するためです。
胃結腸反射とは、簡単に言えば、胃腸の蠕動(ぜんどう)運動を促す反応のことです。
この胃結腸反射を、コップ1杯の水を飲むことで生じさせることができます。
朝はまだ腸が動いていない時間帯ですが、このときに水を飲むと腸が目覚めます。そして胃に水の重みが加わると、胃の下の大腸の上部にまで刺激が伝わり、胃結腸反射が起こって、腸の蠕動運動が活発になり、自然な便意が誘発されるのです。水分によって便が柔らかくなり、スムーズに出やすくなる効果もあります。
便をため込まず、腸をよい状態にしておくことは、病気に嫌われるためには最も重要です。
腸は、消化と排泄を行うだけでなく、食べ物から栄養を取り込み、血液の質を決定づける重要な器官だからです。
私たちは、食事から栄養分を吸収し、その栄養を含んだ血液を全身に行き渡らせることで全身の細胞を養っています。
この血液を作るのが腸管なのですが、腸の動きが悪くなると、腸内でうっ血が起こり、血流が悪くなります。すると腸から必要な栄養素を十分に吸収できず、汚れた血液しか作れなくなるため、栄養素が細胞に運ばれにくくなります。そのため、全身の不調につながります。
このような事態を防ぐためにも、毎朝コップ1杯の水を飲んで腸の動きを活発にしていただきたいのです。
加齢とともに低下しやすい副交感神経を刺激して自律神経のバランスを整える
朝に水を飲むことのメリットはそれだけではなく、副交感神経を刺激することもできます。
自律神経の交感神経と副交感神経は、一日の中でリズムをもって動いています。体を興奮モードにする交感神経は、朝から優位になり始めて、昼をピークに夕方に向かうにつれて下がっていきます。一方、体をリラックスモードにする副交感神経は、昼からゆっくりと上がり始めて、夜に向けて優位になっていき、夜中にピークとなって、明け方に向かうにつれて下がっていきます。
朝は、副交感神経優位な状態から、交感神経優位に切り替わる時間帯で、副交感神経が低下しやすくなります。このとき副交感神経が過度に低下すると、朝からイライラしやすくなるので、下がりすぎを防ぐほうがよいのですが、これに一役買ってくれるのがコップ1杯の水です。
胃も腸も、自律神経のうちの副交感神経にコントロールされている臓器なので、水を飲んで胃腸を活発に動かすと、副交感神経を刺激することができ、下がりすぎが抑えられて、自律神経のバランスが整うのです。
加齢とともに副交感神経は低下しやすくなるので、その意味からも毎朝、コップ一杯の水を飲んで副交感神経を刺激することはおすすめです。
胃にある程度の重みを与えることが必要なので、水の量が少な過ぎたり、少しずつ飲むのでは効果は得られません。
コップ1杯程度(200~250ml)を一気に飲むようにしましょう。
簡単な方法なので、ぜひ習慣にしてください。
このほか本書では、「病気になってしまったときの7つの分かれ道」や、病に嫌われる人が、毎日自然にしている「生活習慣の分かれ道」などを紹介しています。
小林弘幸(こばやし ひろゆき)
順天堂大学医学部教授。日本体育協会公認スポーツドクター。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手、アーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導に携わる。また日本で初めて便秘外来を開設した「腸のスペシャリスト」でもあり、現在、便秘外来の初診は9年待ち。著書に『なぜ、「これ」は健康にいいのか?』(サンマーク出版)、『死ぬまで歩くにはスクワットだけすればいい』(幻冬舎)、『聞くだけで自律神経が整うCDブック』(アスコム)など、多数の大ベストセラー書籍を上梓。
『病に好かれる人 病に嫌われる人』
著者 小林 弘幸 1100円 講談社
病気になる要因は「遺伝が25% 生活環境75%」。「病気になる人」と「病になりにくい人」には、人生の様々な場面において決定的な行動の違いがいくつかあります。医師である著者は「あの日、あの時、ああしておけば!」と、最期に後悔してきた患者をこれまで数多くみてきました。健康寿命の長い人たちがとっている行動とは? 一生単位、一年単位、一日単位でのさまざまな健康行動について語ります。自分のかけがえのない健康を「運」任せにしてはいけません。大切なのは「行動」です。その行動があなたの「健康寿命」を伸ばすのです。
『病に好かれる人 病に嫌われる人』のほか、料理、美容・健康、ファッション情報など講談社くらしの本からの記事はこちらからも読むことができます。
講談社くらしの本はこちら>>
出典元:https://kurashinohon.jp/1033.html
・第2回「いくつになっても元気な人が積極的に食べている2つの食品とは」はこちら>>
・第3回「“怒り”は万病のもと!名医が教える簡単コントロール術」はこちら>>
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