問題作成の狙いはわかるが…


上に挙げたのは、平成29年度の「試行調査」と呼ばれる共通テストの方向性を探るためのプレテストの問題である。

※試行調査の問題および正解表は、大学入試センターのHPにて公開されています。平成29年度試行調査はこちら

特に問題になったのは問3(20ページ上)で、これの正答率が異常に低かった。もちろん試行調査であるから少し振り幅を大きくして、傾向を調べているということもあるだろうが。

 

これまでの試行調査では、本問のように、生徒会規約や法令文、契約書、会話文など、いくつかの文章を読んで問いに答える形が必ず出題されている。ここにはおそらく二つの意味が兼ね備わっている。一つは、複数の文章を併せ読ませることで、複雑な思考力などを問うという点。これは設問の作成が難しいとは思うが理念としては悪くない。

もう一点は、規約や契約書のような「実用的」と思われる文章を読ませて、その内容をきちんと把握する力をつけさせるという単純な発想。こちらは大いに問題がある。

実際に、2022年度から施行される高校の新しい学習指導要領では、国語の中で実用文や資料の扱いが重視される。この試行は、その流れを先取りしたものなのだ。

さらに新学習指導要領では、選択科目として「論理国語」「文学国語」などが区別されて新設される。この場合、多くの高校が「論理国語」を採るのではないかと予想されている。この点について、この1月、日本文藝家協会が「小説が軽視されるのではないか」と危惧する声明文を出した。

(つづく)

 
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