IUSは避妊法として用いられていたものなのですが、数年前から過多月経や月経困難症にも保険適用されるようになりました。子宮の中に、黄体ホルモンが付加された器具を装着すると、その後、その黄体ホルモンが少しずつ放出されて、子宮内膜の増殖が抑えられます。すると子宮内膜が薄い状態になりますから、受精卵が着床しにくくなる。また、おりものも、精子が入っていきにくい状態に変化します。そのようにして妊娠しにくくする、というメカニズムなのです。
一方で、月経というのは子宮内膜が剥がれることで起こるものですから、IUSによって子宮の内膜が薄くなれば、必然的に経血量が減ります。経血を押し出すために子宮がギューッと収縮することも減りますから、月経困難症の改善効果も高く、保険適用が認められるようになったといわけなのです。
ですからユーゴーデノワイヨさんのように過多月経で苦しまれている方の場合、IUSは考えるに値する治療法だと思います。貧血状態になっているということは、経血量がかなり多いということ。通常の月経で貧血にまではほとんどなりませんから、何らかの治療をされたほうが良いと思われます。
「IUS以外の方法はないでしょうか?」とのことですが、たしかにIUSは子宮の中に器具を装着しますから、抵抗を感じられるのだと思います。他には、ピルも過多月経の治療法として用いられますが、40歳以上の人は血栓症のリスクが高まるので、2015年度版の診療のガイドラインでは、「慎重に投与する」とされています。ですから、40歳以上で、かつ今までピルを投与されたことがない方となると、投与を控える医師が増えているのが実情です。もちろん今まで飲んでいた方の中には、40歳を過ぎても注意しながら飲み続けている方はいますが、これから初めて飲むとなるとあまりお勧めはできません。
そういったことも考えますと、ユーゴーデノワイヨさんの場合、IUSのほうが安心・安全かと思います。IUSは一度装着すれば、5年間有効ですから、1日単位で計算するとピルより割安でもあります。ユーゴーデノワイヨさんは現在39歳とのことですから、おそらく今回装着すれば、閉経までにあと1回入れ替えるぐらいで良いのではないでしょうか。副作用や費用などを考えても、私もIUSはお勧めできると思います。
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- 松村圭子(まつむらけいこ)1969年生まれ。広島大学医学部卒業。広島大学産婦人科学教室入局後、2010年に成城松村クリニックを開業。「女性にとって身近で気兼ねなく相談できる生涯のかかりつけクリニック」を目指して、婦人科診療とエイジングケアの最先端治療をおこなっている。また『女30代からのなんだかわからない体の不調を治す本』(東京書店)、『女性ホルモンを整えるキレイごはん』(青春出版社)など著書も多数。 この人の回答一覧を見る
- 山本 奈緒子1972年生まれ。6年間の会社員生活を経て、フリーライターに。『FRaU』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。 この人の回答一覧を見る
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