30代の後半から「伝統工芸」が気になっています。
若いころは、「伝統工芸」と聞くと技術が高いけれども何となく今のライフスタイルに合わないというか、どちらかというとおばあちゃんのおうちにあるような古めかしいもの(無知だったもので。。。ごめんなさい!)というイメージがありました。
実は、「伝統工芸」の衰退や後継者不足の問題は高度経済期には既に顕著になっていて(データ的には生産額では1984年をピークに急激な右肩下がり)、1974年には「伝統工芸品産業の振興に関する法律」が「一定の地域で主として伝統的な技術又は技法等を用いて製造される伝統的工芸品が、民衆の生活の中ではぐくまれ受け継がれてきたこと及び将来もそれが存在し続ける基盤があることにかんがみ、このような伝統的工芸品の産業の振興を図り、もつて国民の生活に豊かさと潤いを与えるとともに地域経済の発展に寄与し、国民経済の健全な発展に資すること」(第一条より)を目的として定められるほどでした。
好奇心旺盛で、経済も伸び盛りで、新しいライフスタイルや海外の面白いものに目を奪われ、これまでの生活の中にあった日用品の価値を日本人が忘れかけた時代でした。
実際、現在の生産額はピーク時の5分の1程度、職人さんの高齢化はすすみ、後継者不足も変わらず深刻です。
ただここ数年、「伝統工芸」への追い風が吹きはじめています。
その理由のひとつは、海外や異業種とのコラボレーションや、伝統工芸を新たな形にするデザインの力など、伝統工芸の高く繊細な技術と現代らしい感覚が融合して、数々の魅力的なアイテムが生まれていること。
例えば、デザイン応用編だと、フランスの紅茶ブランドがコラボレーションしてカラフルに生まれ変わった南部鉄器のティーポットや、さまざまなキャラクターや愛らしいデザインで「こけ女」なるファン層を獲得しているこけしたち、高い技術の応用編だと、わっぱの技術と自然素材が持つ美しさを生かした照明、メガネフレームの鯖江エリアで生まれているフレーム素材を応用したアクセサリーや、金属技術で名高い燕三条のタンブラーや食器。
そして、これらの進化する日本の伝統工芸品の特徴は、新しいデザインやモノが注目されると、「いや、改めて見ると、スタンダードのデザインも魅力的だよね」とその元々の美しさや使い勝手の良さが再評価されている点にもあります。
長い歴史の中で人の手によって作られ使われ続けてきたという「伝統工芸」の品そのものが持つ普遍的な美しさがあるからこそ、そしてその本質を見極めて進化させているからこそ人を惹きつける魅力を持ち続けているのかもしれません。京都で老舗の名を継ぐ友人の言葉「伝統とは革新の連続。進化し続けるからこそ、長く愛される」の言葉を思い出しました。
私もいよいよ人生を折り返し、自分の生活を(経済的なものとは別の意味で)豊かに形作りたいという気持ちとともに、次の世代に何をつなぐか、残していきたいかということも頭に浮かぶようになりました。「伝統工芸」のアイテムをセレクトすることは、生活をより豊かに彩ると同時に産業としての継続を応援し次世代に残すことにつながるのかなとも思っています。いや、もちろん純粋にすごくステキなので欲しいという感情が一番にあるのは間違いないのですが。
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