日本の学校制度が発達障害の子を苦しめる【児童精神医学の権威が今伝えたいこと】_img0
 

授業中に席を立ってしまう、集団行動ができず周囲となじめない……。近年、こうした問題を抱える子が増えていますが、児童精神科医の第一人者として著名な杉山登志郎医師は著書『子育てで一番大切なこと』で、これは子供に原因があるのではないと説いています。また学校生活で生じる問題は、小学生時期の発達とも深く関係している、とも。その点についても分かりやすく解説してもらいました。

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体や言葉が発達し集団行動が可能に


小学生、すなわちそれは学校生活を意味する。そこで“子供の発達と学校”について話をしたい。
学童期とは一般に6歳から12歳ごろまでである。この時期になると、体型が幼児から学童児へ変化する。丸みを帯びた体型から、手足が伸びて細長な体型へと変わり、それにあわせて顔も細長くなり、赤ちゃんの面影が抜けてくる。
この体つきの変化にあわせて、行動にも落ち着きが出てくる。着席して人の話をじっと聞くことができるようになり、大人の指示や禁止にも従いやすくなる。

言葉の発達においては、5〜6歳で母国語の文法的な習得はほぼ終え、言語的なコミュニケーション能力が整ってくる。言葉によって理屈を理解し、説得することも可能となる。
数の概念や、質量不変の法則など、物事の基本的な性質も理解できてくる。
基本的生活習慣の自立や、身の回りを清潔に保つ習慣の躾も一通り完成することで、子供は社会的ルールが分かるようになる。

また、すでに一通りの病気を経験して免疫ができあがっているため、6歳頃になると病気を繰り返すことが著しく減る。頻繁に熱を出したり、喘息の発作を起こしたりしていた子も、かなり丈夫になる。
それゆえこの時期から集団教育が可能になると言われていて、世界の多くの国で、この年齢において学校教育が開始されるのだ。
 

10歳頃までに脳の準備が整う


ところで、人間のすべての行動の背後にあるのは、中枢神経、つまり脳の変化である。
5〜6歳から大脳の新皮質(合理的で分析的な思考や、言語機能をつかさどる)が活発に動くようになり、とくに前頭葉の機能が高まる。前頭葉は旧皮質を抑制する機能を持つのだが、旧皮質は食欲や性欲といった本能や情緒を司るので、欲望や感情のコントロールができるようになるわけだ。
また前頭葉は人の意思や創造性、推論などの機能をつかさどるので、この年齢から精神活動がおこなわれる準備が整ってくるとされている。

 
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