台風15号通過後の9日朝、駅の改札の外で入場を待つ人々。 写真:AP/アフロ

9月9日未明に首都圏を直撃した台風15号の影響で、東京都内では各駅が前代未聞の大混雑となりました。JR総武線の津田沼駅では、改札口から3キロ以上にわたって長蛇の列となり、電車に乗れない人が続出する状況だったようです。

台風の日に出社することの是非については、数年前からネットで議論の的となっており、強風の最中に強制出社させる会社は消滅しつつあるといってよいでしょう。しかし、今回は強風のピークが、深夜から未明にかけての時間帯で、朝にはすっかり晴れ上がっていました。
JR東日本が首都圏の在来線で始発から午前8時までの運転を見合わせるなど、鉄道各社は計画運休を実施しましたが、晴れた空を見たサラリーマンが一斉に駅に向かったことから、各駅には人が殺到。想像を絶する混雑となり、ほぼ丸一日、交通インフラが機能しないという状況が続きました。

ネット上では「一斉に出勤したら大混雑になることなど想像できるだろ!」「3キロも並ぶなんて狂気の沙汰」「社畜は考える気力すら失っているのでは?」といった厳しい意見が飛び交う一方、出社時間を適切に指示しない会社の管理体制を批判する意見や、「今日は出勤しない」という選択ができない社会風潮について疑問視する声もあったようです。

ひとくちに仕事といっても、状況は様々ですから、できるだけ早く出社したいという人が一定数、存在するのは当然のことですが、それにしても、各駅に長蛇の列ができるというのは、尋常な状況ではありません。この大騒ぎを台風のたびに行っていては、それこそ生産性を引き下げ、社会全体として壮大なムダを生み出してしまうでしょう。

筆者は、この問題の根は深く、単純に解決できるものではないと考えています。

台風の時に出社することが馬鹿げているという議論は以前から存在していました。公共性が高いなどどうしても出社が必要な仕事ではないにもかかわらず、事実上、出社が強要されているのは、日本企業の働き方に問題があるという指摘はまさにその通りでしょう。

業務の責任が曖昧で、指示が文書で行われず、お互い顔を見ながらあうんの呼吸で仕事をしている組織が多いですから、メンバーが揃わないと何も仕事が進みません。このため、何が何でも出社するという体育会的カルチャーが生まれ、多くの社員をがんじがらめにしています。

しかしながら、今年から働き方改革関連法が施行されるなど社会の雰囲気は大きく変わっており、10年前と比較すると、体育会的カルチャーはかなり抑制されているはずです。ところが、いくら表面的に優しい言葉をかけるようになったとしても、業務の責任が曖昧で顔を合わせないと仕事ができないという根本的な問題は解決されていません。
 暴力的な強制ではないにせよ、早く会社に行かなければという意識は多くの人にとって共有されたままとなっており、リモートワークなどの諸制度が普及していないことも重なって、多くの人が駅に殺到する状況が続いています。

 
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