供給過剰から新築マンションの販売が鈍化していますが、一部の物件については相変わらずの人気が続いているようです。東京オリンピックの選手村を活用した「HARUMI FLAG」が、第一期の販売を開始したところ、ほぼ完売の見通しとなりました。2019年後半には、湾岸エリアを中心に大型物件の売り出しが控えていますが、こちらも順調な販売が予想されています。

 

一方で、消費増税による逆風や東京オリンピック特需の消滅で、価格が大幅に安くなることを期待する人も多いようですが、マンション価格は今後、どう推移するのでしょうか。

不動産経済研究所の調査によると、2019年7月における首都圏新築マンションの販売戸数は、前年同月比35.3%減と大幅な落ち込みとなりました。

このところマンションの供給過剰が顕著となっており、7カ月連続で販売個数の減少が続いています。しかし、タワーマンションを含む大型物件に対する人気は根強く、即完売という物件は少なくありません。市場では、今後も順調な販売が続き、価格も高く推移するという見方と、オリンピック後には大きく値下がりするという見方に分かれていますが、筆者は、マンション価格が大きく値下がりする可能性は低いとみています。理由は以下の3つです。

ひとつは、国際的に資材価格が高騰しており、マンション建設の原価が上昇していることです。資材価格はデベロッパーがコントロールできるものではありませんから、各社は利益を確保するのが難しくなっています。逆に言うと、極端な値下げができるほどの余裕がありません。安値販売をしたくてもできないというのが実状なのです。

ふたつめは在庫の処理方法です。デベロッパー各社は多くの在庫を抱えつつありますが、大手のデベロッパーであれば、相応の経営体力があり、仮に販売不振が続いても、すぐに在庫を投げ売りすることはありません。時間をかけて徐々に在庫を処分していきますから、破格の値下げという戦略は採用しない可能性が高いと思われます。

リーマンショック当時にも、事業用物件では多くの投げ売りが発生しましたが、新築マンションについては価格はほとんど下がりませんでした。リーマンショックという非常事態でも値下がりしなかったわけですから、世界恐慌のような事態にならない限り、大幅な値下げは期待できないでしょう。

最後は実需の継続です。このところ首都圏を中心にマンション価格が高騰しており、投機目的の投資家が価格をつり上げているという指摘が出ていました。確かに一部の高級物件にはそうした傾向が見られますが、一般的なマンションを購入しているのは、ほとんどが自己居住を目的とした人たちです。

 
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