台風19号によって大規模な水害が発生したことから、住宅が建つ場所への関心が急速に高まっています。日本は災害の宝庫といってもよい国ですから、場所を吟味することは大事ですが、住宅に関するリスクは水害だけではありません。ひとつのことにとらわれず、総合的に判断する必要があるでしょう。

今回の台風19号は、前回の15号と比較して、強風による被害が少なかった反面、水害が多発しました。各地で浸水被害が相次いだほか、一部エリアではマンションの配電設備が影響を受け、停電でエレベーターが使えなくなるという事態も発生しています。

ハザードマップだけではわからない“災害に強い土地”の見極め方_img0
台風19号の豪雨により、神奈川県川崎市では市内を流れる多摩川が氾濫。川沿いの地域を中心に浸水によって大きな被害が出た。 写真:ロイター/アフロ

水害が発生する地域としない地域がくっきり分かれてしまったことから、多くの人が、住宅の建つ場所について関心を寄せており、ハザードマップ(被害予測地図)をもっと積極的に告知した方がよいとの意見も出ているようです。

 

確かに各自治体などが出しているハザードマップを見ると、水害が発生しやすい地域がよく分かります。一般的にハザードマップの信頼性はかなり高く、今回の浸水被害エリアと、マップ上でリスクが高い地域になっているところはほぼ一致していました。

都会の住民の場合、自然の風景がほとんど失われているので、普段はあまり意識しないかもしれませんが、住宅がどの場所に建っているのかで自然災害に対するリスクは大きく変わってきます。

例えば東京という場所は、実は起伏が極めて多く、住む住所によって条件が変わりやすい地域のひとつです。東京の地形は大雑把にいうと、海に近い東側の低地と、西に広がる武蔵野台地で二分されています。都心でいえば、日比谷通りから少し西に行ったあたり(もっと具体的には愛宕下通り付近)が両者の境目となっており、西側のいわゆる「山の手」と呼ばれるところは台地、東側の「下町」と呼ばれるところは低地になっています。

武蔵野台地は基本的に岩盤なので地震に強く、土地が高いことから水害に遭いにくいとされていますが、台地には無数の川が流れており、台地を浸食した谷が存在していることから、この部分は低地になっています。
渋谷はまさにその典型で、渋谷川が浸食してできた場所ですから、渋谷駅前は、土地が高い場所と比較すると水害に遭いやすいといってよいでしょう(ビルが多いので一見しただけではよく分かりませんが、渋谷の地形をよく観察すると、表参道側に行くにも、池尻大橋側に行くにも急な坂道になっていることが分かります。宮益坂と道玄坂という名称からもその様子を伺い知ることができるでしょう)。

渋谷の先にある世田谷区は基本的に台地ですが、さらに西に進むと、多摩川の侵食による河岸段丘となり、徐々に土地が低くなっていきます。一部が浸水被害に遭った二子玉川は川に面した街ですし、駅が水没してしまった武蔵小杉も多摩川沿いですから、どちらかというと浸水の被害を受けやすいエリアということになります。

 
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