しかしながら、今回、水害の被害に遭った地域が危険であると一方的に決めつけるのはよくありません。今回はたまたま水害に焦点が当たりましたから、土地が低く川に近い場所が不利になりましたが、災害はそれだけではないからです。

もし風が強い日に地震が発生した場合、古い木造建築が密集しているエリアは、同時多発的に火災が発生する可能性があり、土地の状況にかかわらず危険地帯となります。また道路や鉄道が寸断された場合、孤立しやすい場所とそうでない場所とでは、被災後の復興状況がまるで変わってくるでしょう。今回が台風ではなく火災だった場合には、まったく別の地域が危険だと言われたはずです。

最終的にどの場所に住むのがベストなのかを考えるためには、想定されるリスクの発生確率やその被害の大きさを数値化して計算する必要がありますが、こうしたシミュレーションを一般の人が行うのは難しいと思います。現実には、考えられるリスク要因を列挙し、自分としては何を優先するのか順位付けを行い、最終判断するというのが落としどころでしょう。

ハザードマップだけではわからない“災害に強い土地”の見極め方_img0
2018年9月の北海道胆道東部地震では、道内で初となる震度7を記録。各地で大規模な山崩れが発生した。 写真:Richard A. De Guzman/アフロ

日本の場合、もっと重視すべきなのは、やはり地震による被害です。地震の被害は、直接的な揺れだけではなく、付随して発生する火災、津波、交通網の寸断といった要素を加味する必要がありますし、付近に斜面がある地域の場合には土砂災害についても意識しなければなりません。

 

揺れという点で地震に強いかどうかはその場所の地形や地質に関係してきますが、国土地理院の地形図や古地図を取り寄せてまで分析出来る人は少ないでしょう。もう少し簡単に得られるヒントとしては公共施設の場所があります。

すべてがそうではありませんが、公共施設はその重要性の高さから、強固な地盤に建設されることが多いという特長があります。東京都内に古くからある公共施設(国会議事堂、東京大学、防衛省など)は、すべて強固な台地の上に建設されています。
 また東京郊外の三鷹市のように、IT時代の心臓部ともいえるコンピュータのデータセンターが集中しているエリアも、地盤がよいとされています。

ただ場所を吟味することも重要ですが、何よりも大事なのは、発生する事態をあらかじめ想定した上で、相応の準備をしておくことであり、これに勝る防災はありません。

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