政府が75歳以上の高齢者が病院にかかる際の自己負担を1割から2割に増やす案について検討しています。今回は高齢者の自己負担引き上げですが、年金と同様、日本の医療財政は逼迫しており、現役世代の負担増加についても議論が始まっている状況です。これからはお金がないと病院にかかれない時代になってしまうのでしょうか。
日本の医療は国民皆保険制度となっており、原則として全員が何らかの公的医療保険に入らなければなりません。日本の医療制度は世界でも稀に見る内容で、医療という点では、わたしたちは世界でもっとも恵まれていると思ってよいでしょう。
例えば米国では、低所得者など、一部の国民を除いて一般的な公的医療保険制度がありませんから、病院の受診は原則として自費になります。米国は近年の景気拡大などの影響もあって医療費が高騰しており、ちょっとした病気で医者にかかっても高額の医療費が請求されます。
以前、ツイッターで、日本人が米国で病気になり、1週間の入院と検査で700万円を請求されたという話が拡散したことがありましたが、今の米国ではこれは極端なケースではありません。多くの人は、このような金額をポンと払うことはできませんから、民間企業が提供する医療保険に入ることで治療費に備えていますが、保険料も高く、毎月かなりの金額が保険に消えてしまいます。
一方、英国は主に税金を財源とした国民皆保険制度を備えており、基本的に医療費はタダですが、保健医療の質はあまり高いとはいえません。誰でも無料で病院にかかれますが、検査や入院などでかなり待たされるケースも少なくないようで、所得が高い人は、民間の医療保険を活用しています。
日本の医療制度は、原則として3割の自己負担が必要ですが、基本的に誰もがほぼ同じ条件で、相応の治療を受けることができる仕組みです。自由診療で全額自己負担するケースと、保険で診療を受けるケースで医療の質はそれほど変わりませんから、ある意味ではもっとも平等な制度といってよいでしょう。
しかしながら、これだけ立派な医療制度を運営していくのは並大抵のことではありません。
当然ですが、制度の維持には莫大なお金がかかっており、近年、財政の悪化が深刻化している状況です。これまで原則1割だった75歳以上の自己負担を2割に引き上げようとしているのはそのためです。近い将来、ほぼすべての人が3割の自己負担となり、さらに自己負担率が引き上げられる可能性も否定できないでしょう。
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