今回ご紹介するマンガは月刊「デザート」で連載中の人気作『ゆびさきと恋々』。繊細なタッチで描かれる世界、叙情的な言葉の選び方、そして胸がきゅっとするラブストーリーには、少女漫画の魅力が詰まっています。


主人公は女子大生の雪。ある日、電車の中で外国人に話しかけられて戸惑っていると……。お分かりですね。とてもかっこいい男の子が現れます。恋のヨ・カ・ン!

彼女はただ音のない世界にいるだけ。漫画『ゆびさきと恋々』の切なさに悶絶必至_img1

青年は大学の先輩、逸臣(いつおみ)でした。
「Do you need help?」

 

助けてもらった雪は髪を耳にかけ、両手を使って感謝を伝えます。
耳には補聴器。そして手話で「すみません」。
そう、彼女には聴覚障がいがあるのです。

そんな彼女に遠慮も怯むこともなく普通に接する逸臣。至近距離で顔を近づけ「初めてこういう人に会った」と言います。

彼の対応のすべてに驚く雪。きっと初対面で耳が聞こえないことを伝えるたびに、動揺されることが多かったのでしょう。そして電車を降りた逸臣が車内に残る彼女にこう伝えるのです。

「ま」
「た」

口の動きをゆっくりにして読みやすく。
 

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この鼓動は何? と、初めての胸の高鳴りに戸惑います(やっぱり恋のヨ・カ・ン!)。
その後、親友の協力の甲斐あって二人きりに。帰り際、勇気を振り絞って逸臣の連絡先を聞き出す雪。

手を振って別れる直前、目の前にいるふたりはスマホを使ってメッセージを送り合います。

空から降っていた雪が積もり始め、いつもなら聞こえる車のエンジン音や塀の向こうの生活音すべてが雪に吸収された静かな世界に。
きっと音のない世界にいる彼女の日常に近いのではないでしょうか。

最後に逸臣が雪に送ったメッセージは読んでいる私が恋に陥落。当事者の雪なら尚さらだったはず。ここは紹介を自粛します。実際に読んで悶えてください!

また、作中では雪が相手の口元から読み取るセリフは印刷を薄くしたり、聞き間違えた言葉は文字を転ばせたりと、聴覚障がいの方の世界をよりリアルに伝えようという試みも。例えば雪が言葉を読み違えてしまっとことを読み手の私たちがその表記で理解できるというわけですね。なるほど。

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この作品を通して、聴覚障がいの方の日常に想いを馳せました。私たちが思うほど大変ではないことも、逆に気を使ったことで寂しい気持ちにさせていることがあるのかもしれません。

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彼女は普通の女の子。ただ音のない世界にいるだけの。
そんな雪の甘い恋の物語、まずは1話無料をどうぞ。
 

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『ゆびさきと恋々(1) (KC デザート)』

著者 森下suu 講談社

女子大生の雪は、ある日困っているところを同じ大学の先輩・逸臣に助けてもらう。聴覚障がいがあって耳が聴こえない雪にも動じることなく、自然に接してくれる逸臣。自分に新しい世界を感じさせてくれる逸臣のことを雪は次第に意識し始めて…!?