「女性役員ゼロ」企業が本当に“ヤバい”ワケ。多様性と収益の密なる関係とは_img0
 

米国で、女性役員がいない企業は株式市場に上場させないという動きが出てきています。資本市場はグローバルに連動していますから、近い将来、日本にもこの流れがやってくる可能性は高いでしょう。企業の経営と人事の多様性についてはどう考えればよいのでしょうか。

 

米国の投資銀行ゴールドマンサックスは、女性取締役がいない企業のIPO(新規株式公開)について受託しない方針を明らかにしました。同社に株式の引き受けを依頼する企業は、少なくとも1名の女性を取締役として任命する必要があります。同社はIPO市場において絶大な影響力を持っていますから、この決定は多くの企業に影響を与えることになるでしょう。

この措置が実施されるのは今年の7月からで、2021年にはさらに条件を厳しくし、最低2名の女性役員の就任を求めるそうです。対象となる市場は当面、欧米市場ということでアジアは含まれていません。しかし資本市場は欧米中心に動いており、各市場の連動性は高まっていますから、いずれこの流れは日本にも波及する可能性が高いでしょう。

女性に門戸が開かれていないというのは、各国の共通認識ですから、今回の決定は(少なくとも諸外国では)自然な流れとして受け止める人が多いようです。しかし一部からは、男性の逆差別になるといった意見も聞かれます。

同社がこのような決定を下したのは、女性の機会を拡大させるという社会的な目的もあるかもしれませんが、これはそれほど重要ではありません。女性取締役の就任を強く求めた最大の理由は「収益」です。

投資銀行大手クレディスイスの調査によると、「女性取締役が1人もいない企業」と「女性取締役を1人以上有する企業」を比較した場合、女性取締役がいる企業の方が圧倒的に業績がよく、特にリーマンショック以降は、株価の上昇率に顕著な違いが見られるそうです。簡単に言ってしまうと、女性役員がいない企業は儲かっていないのです。

企業の人事が多様化していないと、企業本来の目的である「利益を出す」という点で不利になるという現実について、機関投資家も強く認識し始めています。

 
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