一人っ子であることが寂しくてたまらない、と話す質問者さん。しかし、そもそも「一人っ子“だから”寂しい」と感じてしまうのはなぜなのでしょうか。コミカルな視点で大人のあり方を論じているコラムニストの石原壮一郎さんが、「無意識の刷り込み」と、またそれを周囲にも押し付けてしまう危険を解説してくれました。
smag1296さんからの質問
Q. 一人っ子である寂しさを消化できずに困っています。
私には兄弟姉妹がおらず、一人っ子です。周囲の人たちが年末年始を兄弟姉妹、姪甥とにぎやかに過ごしたという話を聞くと、たまらなく寂しくなります。私にも夫、子どもと家族がおりますが、私が一人っ子のせいで子どもたちに帰省時に遊べるいとこもおらず、私だけでなく子どもたちにも寂しい思いをさせているなと感じます。もう数年間、お正月がくるたびに寂しい気持ちを消化できずにいます。自分で納得しようと思っても堂々巡りでなかなか消化できず、勝手ながら相談文を送らせていただきました。(42歳)
A. 人は、何か一つ不幸があるほうがラクだと感じてしまうことがあります。
よく世のおじさんおばさんは、一人っ子の親や当人に「早く2人目を」とか「一人っ子はかわいそう」とか言いますもんね。何の根拠もない発言なのですが、smag1296さんもそういった言葉に洗脳されているのではないでしょうか。
きっとその人たちは自分にはきょうだいがいて、そんな自分の人生を肯定したくて言っているだけ。きょうだいがいたらいたで、デメリットもあります。いつもお菓子は半分ことか、すき焼きのお肉は2切れまでと言われたりとか。これらは些細なことですが、例えば寂しい時に親の愛情を独り占めできなかったり、大人になって、きょうだい同士で骨肉の争いが起きることもあります。一人っ子でもきょうだいがいても、それぞれいいところと悪いところはあるんです。
確実に言えるのは、smag1296さんが自分が一人っ子であることを申し訳なく思えば思うほど、子供さんの不幸を増やすことになるということ。子供さんたちは何とも思っていなくても、「私にきょうだいがいなくてごめんね」とか「いとこがいなくて寂しいよね」と言うことで、子供は「え?そうなんだ、私たちかわいそうなんだ」と思うようになるでしょう。自分が悲しみに浸るのは自由ですが、子供さんにも共有させるのは控えたほうがいいと思うのです。
smag1296さんには、夫も子供もいて帰省する実家もある。自分が持っている幸せのほうに目を向けてみてはいかがでしょうか?「きょうだいがいない」と無理やり不幸を見つけて(そもそも不幸かどうかも謎ですが)、わざわざ不幸のスパイラルに飛び込んでいく必要はありません。日本人は謙虚を美徳としているせいか、幸せでいると何となく引け目を感じてしまう癖があります。1つか2つ「寂しい」とか「不幸だ」と思うことがあると、かえってラクになれるのかもしれません。でもそれは一人でこっそりやるべきこと。子供さんなどまわりを巻き込むのはやめましょう。
今のsmag1296さんは、もしきょうだいがいたとしても、何か別の不幸を探そうとする気がします。「きょうだいはいるけど男きょうだいがいない」とか……。それってsmag1296さんのご両親を責めることにもなります。考え方を根本から逆にして、「私ってこういう部分も、こういう部分も幸せ」という方向で“粗探し”をしてみてはいかがでしょうか。
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- 石原壮一郎1963年生まれ。コラムニスト。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、『大人の女養成講座』、『大人力検定』、『大人の合コン力検定』など大人をテーマにした著書を発表し続けている。近著に『9割の会社はバカ:社長があなたに知られたくない「サラリーマン護身術」』(飛鳥新社)、『本当に必要とされる最強マナー』(日本文芸社)、『大人の人間関係』(日本文芸社)などがある。 この人の回答一覧を見る
- 山本 奈緒子1972年生まれ。6年間の会社員生活を経て、フリーライターに。『FRaU』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。 この人の回答一覧を見る
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