身近な人の死をきっかけに今ある幸せの脆さを痛感し、そこから常に不安に苛まれるようになってしまったという質問者さん。コミカルな視点で大人のあり方を論じているコラムニストの石原壮一郎さんが、そんな不安に陥った心との向き合い方を提案してくれました。
翔さんからの質問
Q. 身内を亡くして以来、この幸せも明日はないかもしれないという恐怖に怯えています。
3年の間に身内を4人亡くしました。中でも唯一大好きだった祖母と、若くして亡くなった義兄の死はとても心に重くのしかかっています。
義兄は突然の事故により帰らぬ人となりました。人はいずれ亡くなると頭では理解しています。が、突然亡くなっていった身内を見て、明日家族や自分に何が起こるか本当に分からないと思うと、とても恐怖を感じるのです。昨日まであった幸せな現実がなくなってしまうかも、という恐怖に怯えながら生活していることにストレスを感じます。「今を生きる」と言いますが、全くその通りで、それも頭では理解して「悔いのない人生を」と思うのですが、それ以上に今日の幸せが明日はないかもしれないと思うことにやりきれなくなります。虚しくなります。とても怖くなります。時が解決してくれるのでしょうか。どうすれば楽になれるのか。一生このことを後ろ向きに捉えて生活していくのか。心の在り方がわかりません。(38歳)
A. 「自分はこんなにも弱かったのか」と打ちのめされる時間も、必要かもしれません。
そんな短期間に親しい人を何人も亡くしてしまったのですから、今はショックが大きいのは当然です。無理に前向きになろうとする必要はないと思います。こういう時って、自分も周囲も「せっかく生きているのに楽しまないなんて、亡くなった人に申し訳ない」などと言いがちです。それでも怖いものは怖いですよね。時間の経過とともに、その恐怖心が薄れていくことを信じるしかありません。
人間はありがたいことに、忘れることが得意な生き物です。今はたしかに辛いと思いますが、この先、今より辛くなっていく可能性は低いはずです。ご飯を食べて眠ってさえいれば、折れた骨はやがてくっついていきます。もし今よりどんどん辛くなっていくようなら、それは他に原因があるかもしれません。その場合は、そちらをしっかり探ったほうがいいでしょう。
今の翔さんは、起こっていないことに怯える気持ちよりも、実はそんなふうに怯えてしまっている、自分の弱さに打ちのめされている部分もあるのではないでしょうか。まずは、その弱さを認めて充分に打ちのめされることも大事だと思います。打ちのめされることこそが、翔さんにとって、もっとも真摯に「今を生きる」ことに他なりません。それに、何かに打ちのめされるというのも、生きていなければできないことですから。
ただし世の中には、打ちのめされている人の弱った気持ちにつけ込んでくるケシカラン輩もいます。そこは注意してくださいね。
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- 石原壮一郎1963年生まれ。コラムニスト。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、『大人の女養成講座』、『大人力検定』、『大人の合コン力検定』など大人をテーマにした著書を発表し続けている。近著に『9割の会社はバカ:社長があなたに知られたくない「サラリーマン護身術」』(飛鳥新社)、『本当に必要とされる最強マナー』(日本文芸社)、『大人の人間関係』(日本文芸社)などがある。 この人の回答一覧を見る
- 山本 奈緒子1972年生まれ。6年間の会社員生活を経て、フリーライターに。『FRaU』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。 この人の回答一覧を見る
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