高齢の親を心配して、認知症などの検査を受けてほしいと思っている人は少なくないはず。コミカルな視点で大人のあり方を論じているコラムニストの石原壮一郎さんは、検査だけでなく、避けようのない“老い”に対しても心の準備をしておくことが大事だとアドバイスしています。
jjnonさんからの質問
Q. プライドの高い父。どうしたら認知症の検査を受けてもらえるでしょうか。
私は50代独身で、子どもはおらず、フルタイムで事務の仕事をしています。20代の終わりに母を亡くし、3歳年下の妹は嫁ぎ(現在子どもが受験生)、今は父と二人で暮らしています。父はいわゆる団塊の世代で、80歳近くなった今でも一日に1万歩歩き、かかりつけの医師からもやや血圧が高めだが概ね良好と言われるほど健康です。しかしここ数年は物忘れが多くなり、私としてはこのままだと認知症になる可能性があるのではと心配しています。「加齢による物忘れ」とも言えますが、認知症は初期の段階であれば対処法もあるようなので、できれば父に認知症検査を受けて欲しいと思っています。
しかし父は「自分は大丈夫だ」と言い、受けることを拒絶しています。世代的なものでしょうか。決して厳格すぎるわけではないのですが、プライドが邪魔をするようです。妹からもそれとなく言ってもらっていますが、なかなかうまくいきません。実際に認知症の親御さんと同居している友人の話なども聞き、もし認知症の可能性があるのならば早めに対応していきたいと思っております。父の自尊心は大切にしたいと思っていますが、何か良いアドバイスがいただければと思い相談させていただきました。(51歳)
A. もし認知症と診断された時にどうするかをしっかり考えて。検査はその後でもよいのでは。
以前、認知症に詳しい人に聞いたのですが、「認知症の検査を受けよう」とストレートに言うと、誰でも「ボケ老人扱いしやがって!」となってしまうもの。そんなときは、「じゃあ、大丈夫なことを証明しに行こう」と言うと納得してもらえるそうです。jjnonさんのお父さんも「俺の実力を見せてやる!」と思ってくれるかもしれません。
問題は、本当に認知症だったときですが、認知症専門のお医者さんは、そういったときの対応にも慣れているので、「年相応ですよ」と言ったり、「今の状態を維持できるよう頑張りましょう」とか、上手に対応してくれるはずです。
ただ、お悩みを拝見して感じたのは、もしお父さんが認知症だったとき、jjnonさん自身は受け入れる覚悟ができているのか?ということです。早くにお母さまを亡くされ、今は父子二人で暮らされていることもあって、お父さんを思う気持ちが大変強いのだと思います。それだけにお父さんの“老い”を恐れて、認知症の検査を受けさせることに囚われすぎてはいないでしょうか。お父さんを上手く乗せて、検査を受ける気になってもらえたらそれはそれで良いと思いますが、もし認知症と診断されたらどう受け止めるか、どう対処するかまできちんと考えてから受けてもらったほうが、お互いにとっていい展開になるでしょう。
いくらお医者さんが「現状を維持できるよう頑張りましょう」と言ってくれたとしても、今現在、認知症を治す特効薬はありません。必死になって現状を維持しようと、いきなり運動をさせたり食事制限を徹底しようとしたりしても、かえってお父さんを追いつめてしまうことになりそうだし、jjnonさん自身も追いつめられそうです。もしお父さんが認知症と診断されたときに、それを冷静に受け止める心の準備はできているでしょうか。
専門家でもないのに僭越なことを言って失礼しました。お父さんのことを心配するjjnonさんの気持ちは素晴らしいと思いつつ、相談を読んでそんなことを感じた次第です。
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- 石原壮一郎1963年生まれ。コラムニスト。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、『大人の女養成講座』、『大人力検定』、『大人の合コン力検定』など大人をテーマにした著書を発表し続けている。近著に『9割の会社はバカ:社長があなたに知られたくない「サラリーマン護身術」』(飛鳥新社)、『本当に必要とされる最強マナー』(日本文芸社)、『大人の人間関係』(日本文芸社)などがある。 この人の回答一覧を見る
- 山本 奈緒子1972年生まれ。6年間の会社員生活を経て、フリーライターに。『FRaU』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。 この人の回答一覧を見る
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