4月14日、衆院本会議で歓談する安倍晋三首相と麻生太郎財務相。 写真:つのだよしお/アフロ

新型コロナウイルスによって所得が大幅に減少した世帯を対象に、政府が30万円の給付金を支払うことを決定しました。非常に残念なことですが、この制度はあまり出来のよいものではなく、ほとんどの世帯は支払いの対象になりません。批判が殺到したことから、政府は急遽、30万円プランの取り下げと、10万円の一律給付の検討を開始しましたが、最終的なプランはまだ決まっていません。感染拡大の長期化もほぼ確実ですから、わたしたちは厳しい現実を見据えた上で、今後の生活を組み立る必要があります。

 

政府は新型コロナウイルスの影響で収入が減少した世帯を対象に、30万円の給付金を支払う制度を閣議決定しました。当初、政府は世帯や個人に対する給付には否定的でしたが、多くの論者がメディアなどで再三、指摘した結果、ようやく重い腰を上げた格好です。

経緯はともあれ、政府が給付金の支払いを決定したのはよいニュースですが、条件があまりにも厳し過ぎるため、あちこちから失望の声が上がる結果となってしまいました。

給付金は、2〜6月のいずれかの月収が減少し、世帯主の年収が住民税非課税以下になった場合、もしくは、年収が半減して、住民税非課税水準の2倍以下に落ち込んだ場合に支払われます。ここで重要な意味を持ってくるのが「住民税の非課税世帯」という言葉です。

私たちは地方自治体に対して住民税を支払っていますが、一定水準以下の所得しかない場合、住民税が免除される仕組みになっています。この条件に合致する世帯というのが住民税の非課税世帯です。非課税になる条件は人によって異なりますが、単身者の場合には年収が約100万円以下、4人家族では約255万円以下になると、住民税が非課税となります。

これは年収ですから、月収に換算すると単身者では8.3万円、4人家族では21万円です。単身者の場合、2〜6月のいずれかの月の収入が減って8.3万円以下になれば、4人家族の場合には21万円以下になれば給付金を受け取れる計算です。

この条件を満たさない場合でも、月収が半減以下となり、下がった月収をベースにした年収換算の金額が非課税対象の2倍以内に収まっていれば給付金を受け取れます。例えば4人家族で、月収50万円だった人が、月収25万に落ち込んだ場合には、25万円を年収換算すると300万円となり、非課税基準の2倍(4人家族の非課税水準は255万円なので、その2倍は510万円)を下回っていますから給付対象となります。しかし、42万円だった人が25万円に落ち込んでも半減ではありませんから、給付金はもらえません。

この施策は非常に分かりにくく、しかも収入が減ったことを証明する書類を提出しないと手続きをしてもらえない仕組みです。加えて、設定された条件を満たす世帯はかなり少ないのが現実と考えられます。政府は1300万世帯に支給できると説明していますが、実際には多くの世帯が対象にならないでしょう。

いわゆる一般的な中間層の場合、よほどの収入減少にならなければ、給付は受けられないと思ってよさそうです。

 
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