月曜日ですね。
東京は雨の朝でしたが、次第に空が明るくなってきました。窓を開けるとむんむん緑の青い匂いが。鳥の声も賑やかです。

今日は、週末に読んだ、佐藤愛子先生と小島慶子さんの対談本があまりに面白かったのでご紹介しますね。ミモレでもライターの小泉なつみさんがご紹介してくださいました。『人生論 あなたは酢ダコが好きか嫌いか ~女二人の手紙のやりとり~』です。

小島慶子さんの息子さん二人とご主人(という言い方が正しいか分かりませんが)はオーストラリアに住んでいて、家事と育児はご主人が担当し、自身は数週間に一度日本に「出稼ぎ」しているという生活を6年続けています。

 

常に「夫はなぜ、私の孤独と不安にこうも無頓着なんでしょう」と悩む小島さんは、以前、あることをきっかけにご主人に殴りかかったことがあると書きます。でも万が一相手がよろめいても物が倒れたりしないような、リビングの真ん中を選んでやりました、というのがいかにも小島さんらしい(笑)。それに対する愛子先生の返信が最高なんです。

慶子さんは夫婦喧嘩の年季は入っているようだけど、まだ真髄には迫ってないねえ、という感想です。(略)そもそも喧嘩は深謀遠慮が必要です。謀を深め、先の先まで考えて行動に出ること。あなたは書いておられます。夫に殴りかかった時にも万が一、相手がよろめいても物が倒れたりしないような、リビングの眞中を選んでやる、と。いかにも深慮しているかの証據のように書いておられるけれど、私にいわせると浅虜も甚しい。私は肉弾戦に於ては女は非力であるということを弁えているので、「殴りかかる」なんて無謀はしません。代りに物を投げつける。その投擲物だってね、投げて壊れても損をしない物を選びます。最適なのが牛乳瓶です。(略)私は突然の戦闘に備えて、瓶入りを毎朝配達してもらってます。「治にいて乱を忘れず」とはこのことであります。(『人生論 あなたは酢ダコが好きか嫌いか:女二人の手紙のやりとり』より)

夫婦喧嘩をするならこのくらいの気概を持ってやらねばならないと思ったりしつつ、激しすぎる夫婦関係を書きながらこんなにユーモラスに自分を俯瞰できる域にいつか私も達することができるんだろうか、いや無理だなと(笑)。ふふふ、と笑いが止まらない私を、夫が気味悪そうに見ていました。

第二に夫婦喧嘩はテンポよく運ぶことが第一です。グズグズと梅雨時の雨だれみたいにいつまでも同じようなことをくり返ししゃべっていると、テキはとっくに聞いちゃいなくなってる。相手を屈服させるのが喧嘩の目的であれば、グサっとやってサッと退く!そうでなければ成功とは言えない。夫婦喧嘩の大義は要するに「ウップン晴し」ですからね。「颱風一過。後は雲ひとつない、ルンルン青い空」というのが望ましい。私ほどの師範になると、夫婦喧嘩は憂きこと多い日常を活性化する一服の清涼剤でした。テキに取ってはどうだかわからないけれど。(『人生論 あなたは酢ダコが好きか嫌いか:女二人の手紙のやりとり』より)

天晴れ!恐れ入りました!と思うのですが、ここは序の口で、お二人の手紙のやり取りを通して、夫婦とはなんだろうとその真髄に迫っていく面白さがありました。そして、何事も真剣で「エア離婚」(実際は離婚していないけど離婚したように生活すること)を選んだ小島さんに、愛子先生が手紙の最後に書いた「結論」にも痺れました。

夫婦関係に悩んでいる人、モヤモヤしている人がいらしたらぜひ読んでみてください。今日のようにジメジメした日に「はっはっは!」とお腹から笑いながら読むのにぴったりな一冊です(笑)。

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