新型コロナウイルスの感染予防といえば、まずは手洗いに消毒です。が、その手洗いの頻度、つまり洗いすぎや、消毒のしすぎによっては、「かえって逆効果になる可能性がある」ということをご存知でしょうか。書籍『感染を恐れない暮らし方 新型コロナからあなたと家族を守る医食住50の工夫』の著者で、小児科医・ウイルス学研究者である本間真二郎さんにお話を伺いました。

手の洗いすぎ、消毒のしすぎは感染リスクを高める恐れも#コロナとどう暮らす_img0
 

接触感染を防ぐには、まず手洗い。けれど……


手洗いや手指の消毒は、ウイルスの接触感染を防ぐのにとても有効です。皮膚は粘膜ではありませんので、傷がない正常な皮膚は、特殊な病原体でなければほぼ完璧に感染(体内への侵入)を防ぎます。
接触感染では手を介した場合がもっとも多くなりますので、手についても感染する前に手を洗う、消毒することで感染を防ぐことができるのです。通常は石けんを使って洗うことが多いでしょう。

 

手指の消毒も外出先など、手が洗えない場面では欠かせません。
今回の新型コロナウイルスは、インフルエンザと同じようなウイルスです。石けんやアルコールにはある程度の効果があると考えられます。
ですから、感染予防の基本として、「石けんで手をよく頻回に洗い、さらにアルコールで消毒する」という方法が推奨されているのです。

しかし、そのいっぽうで、手洗いをしすぎる、石けんを使いすぎる、消毒をすることで、むしろ感染のリスクを高くするという考え方もあります。

「手を洗い、消毒するほうがいいのか?」
「手をあまり洗わず、消毒もしないほうがいいのか?」

じつはどちらも正解なのです。
 

身の回りの微生物をなくすと、バリア機能が失われる


手洗い、消毒するということは、病気をおこす病原体(今回の場合は新型コロナウイルス)を積極的に攻撃して排除して防ぐ効果がある一方、過度な石けんの使用や消毒は、皮膚に存在する常在菌にとっては大きなダメージにつながります。

常在菌とは、自分のからだの内側と外側に存在する細菌や微生物の総称です。
本来、人のからだの内も外も微生物だらけであり、たとえば腸内細菌は約100兆個も存在しています。人はそれらの微生物と共存している生物です。
そして、それらの微生物が人の健康にとってもっとも大事なのです。

たとえば、自分のからだを守るのが免疫の働きですが、この免疫のシステムは、生まれてから毎日毎日、自分の身のまわりの微生物とコミュニケーションをとりながら成長、完成、成熟しています。その微生物を排除しすぎることは、自分のバリア機能をみずから下げていることにもつながるのです。

つまり、感染予防やあらゆる健康にとって、通常の皮脂や常在菌がとても大切であるという点では、なるべく手洗いや消毒をしないほうが自分の防御力を上げるという考えになります。
身のまわりの微生物をなくすことは、自分のバリアを失うことであり、ちょっとした軽い感染や新規の感染症に対して免疫力、抵抗力を失ってしまうのです。
これが失われたことによる免疫系の機能異常が、新しい感染症の出現とその対応能力が低下している最大の理由──と私は考えています。

 
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