環境問題、貧困、格差、性差別といった様々な社会課題を、ビジネスを立ち上げることで解決しようとしているのが、ボーダレス・ジャパンの田口一成さん。ボーダレス・ジャパンは、社会問題を解決する「ソーシャル・ビジネス」しかやらない会社。社会課題ごとに事業を立ち上げ、その数はすでに35社になっています。「地球温暖化はコロナショックより大変なことになっている」という田口さんに、地球温暖化がいま、どうなっているのか、私たちひとり一人が社会貢献としてできることは何かをうかがいました。

「コロナよりも大変」地球温暖化のタイムリミット【社会起業家、田口一成】_img0
 

田口 一成
1980年生まれ。福岡県出身。大学2年の時に発展途上国で栄養失調に苦しむ子どもの映像を見て「これぞ自分が人生をかける価値がある」と決意。株式会社ミスミに入社後、25歳で独立。環境問題、貧困問題、障害者差別、耕作放棄地問題などの社会問題を解決するソーシャル・ビジネスしかやらない会社、ボーダレス・ジャパンを創業。2020年6月現在、世界13ヵ国で35の事業を展開している。社会起業家の育成を通して、1000の事業を生み出し、社会を変えることを目指している。2020年4月にはテレビ東京「カンブリア宮殿」に出演。2016年にTEDxHimiで行ったスピーチ「人生の価値は、何を得るかではなく、何を残すかにある。」の動画再生回数は50万回を超える。

 


「スイミー」を理想とする組織


新型コロナウイルス感染症は人々に、生活様式の変化、経済打撃と様々な影響を及ぼしています。僕たちの会社も、コロナショックにより大きな影響を受けました。ボーダレス・ジャパンは、現在、世界13カ国で35の事業を展開し、約54億円の売上をあげています。

環境配慮型のエシカルファッション、捨てる社会を変えるリユースサービス、貧困層を職人に育成するレザーブランド、耕作放棄地を活用し高齢者雇用を生み出す事業、地方の人口減少を解消するための移住サポートなど様々な事業がありますが、店舗をやっているところは全部閉鎖したケースもありますし、個々の事業では完全にキャッシュアウトした事業もありました。工場や店舗は厳しいですが、通販は伸び、トータルとしてはなんとか生き延びているというところです。

僕は、スイミーのような組織体が理想だと思っています。小さい魚が群れとして集まって、大きな姿をする、子どもの頃に読んだ絵本の『スイミー』ですね。全体としては大きくないと見向きもされないので、鯨より大きくなりたいと思っています。

ですが、通常、大きくなるためには肉食で他を食べながら大きくならないといけない。競争社会でシェアをとって大きくなっていく、弱肉強食のやり方ですね。

僕は、それは素敵な社会のつくり方ではないと思っています。だって、食われる方はたまらないですよね……。食う側になりたいわけではありません。ひとつひとつはそれほど大きな図体になる必要はないけれど、小さくて活き活きした組織が、一つの志の元にたくさん集まって、大きな姿になっていく。これが僕たちの理想の姿です。そのうちの数十パーセントがなにかの理由で苦境に立たされても、残りの仲間がそれを支える。ボーダレス・ジャパンは、そういう組織を目指しています。
 

コロナショックよりずっと大変なこと


今回、多くの人が感じたことだと思いますが、経済活動が止まる危機感というのはすさまじかったですよね。生活をしていく上で、経済がまわることはとても大切だとわかりました。これがもし、電気が止まっていたら、どうなっていたと思いますか?

電気が止まると、テレワークもステイホームもできません。電気はエネルギーによってつくられます。エネルギー自給率という言葉をご存知でしょうか?

食料自給率という言葉はご存知ですよね。「日本は食料自給率が低い」という話はよく耳にすると思うのですが、日本の食料自給率は、およそ40パーセント
です。
これに対して、日本のエネルギー自給率は、およそ10パーセントと言われています。とても低いですよね。食料自給率よりもずっと低い。

日本の発電の8割は火力発電です。火力発電をするときには、石油や石炭、天然ガスを燃やしているのですが、それらはほとんど輸入に頼っています。

コロナによって世界情勢も揺れ動いています。石炭や石油が輸入できなくなったらどうなるか。ステイホームもできませんよね。石油や石炭が日本のどこかから急に出てくることはありませんので、エネルギー自給率を高めるために、自然エネルギーを増やす必要があります。

自然エネルギーとは何かというと、吹いている風、降り注ぐ太陽、それらをエネルギーに変えるということです。これだけ世界情勢が不安定になると、もし、石油や石炭の輸入が止まったらどうするのかということを考えておかないといけません。国民の生活を守るという意味でも、エネルギー問題を考えないといけないわけです。

コロナ禍でも地球温暖化対策のためにできる選択とは【社会起業家、田口一成】>>

 
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