写真:つのだよしお/アフロ

新型コロナウイルスで世界経済の低迷が確実視される中、株価が堅調に推移しています。一部からは現実を無視したバブルだとの声も聞こえてきますが、果たして今の株価は高すぎるのでしょうか。

 

ニューヨーク株式市場は新型コロナウイルスの影響で大幅に下落したものの、3月以降、反転上昇に転じています。ダウ平均株価は一時は2万7000ドルを突破し、コロナ危機前の水準に迫る勢いでした。ダウ平均株価についてはその後、調整モードに入っていますが、ハイテク株が多いナスダックは高値を更新しています。

日本の株式市場は基本的に米国に追随しますから、日経平均株価も一時、2万3000円を突破するなど、やはりコロナ危機とは思えない堅調ぶりでした。

一方、実体経済は悪化が確実視されており、IMF(国際通貨基金)は2020年の世界経済についてマイナス4.9%と予想しています。これは滅多に見られない凄まじい数字であり、もし予想が当たった場合には、世界恐慌(1929年)以来の出来事となります。

まさに100年に1度の大不況であるにもかかわらず株価が上がっていることについては、IMFも警戒を強めており、最新の報告書では「実体経済との乖離が見られる」との指摘を行いました。IMFが株価の水準について具体的に警告を発するのも異例なことです。

では、なぜこのタイミングで株価が上昇しているのでしょうか。

一部の専門家は、量的緩和策の弊害であると指摘しています。米国はリーマンショックに対処するため、中央銀行が国債を積極的に購入し、市中にマネーを大量供給する量的緩和策を実施しました。本来であれば、ある程度、景気が回復した後は、量的緩和策から撤退し、金利を引き上げる予定でしたが、景気対策を最優先するトランプ大統領が金利の引き上げに猛反発。米国は金利を十分に上げることができませんでした。

こうした状況でコロナ危機が発生したことから、金利の引き上げはさらに遠のき、事実上、量的緩和策を継続する形になっています。市場には大量のマネーが供給されていますが、コロナによる景気悪化で行き場がなく、余剰マネーの一部が株式に殺到しているという図式です。

 
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