自分を縛ってしまう、保守的な価値観に注意

スイス・ルツェルンにて研修をしていた頃。ひとり目のお子さんを妊娠中。

——篠田さんでも10年かかったと聞くと、なんだかホッとします(笑)。まさに子育てや介護の渦中にいて余裕がないときに、少し距離を置いて見るのはなかなか難易度が高い気もします。

 

「そうですね、自分がどういう状態のときに機嫌をコントロールできなくなるのか、あるいは少し緩むのかを知っているといいのかもしれませんね。たとえば、私は出産前から自分一人の時間を必要とするタイプだったんですね。

一人の時間が確保できないと、すごくイライラしてきちゃうという自覚があったので、産休中でも週に1度、シッターさんに来てもらっていました。その間、特に用事を済ませるわけでもなく、ただ一人でお茶をしに行ったり。

シッター代は、高いといえば高いのですが、自分を安定させ、気持ちよくさせる作用としてはネイル代などと同じだと思うようにしていました。『今の自分に必要なのはネイルではなくシッターさんだ!』と。

人によっては、それが美容院かもしれないし、体を動かすことかもしれません。なにかしらの自身を保てる方法を知っていると、それが支えになることもあると思います。

ですが、一番大きな問題は『女性や母親はこうあるべき』という保守的な価値観で自分を縛ってしまうことなのではないでしょうか。

というのも、私自身にもそういう価値観がどこかにあるんですね。ある面では、海外での在住経験から、シッターさんにお願いすることに関しては、無意識に自身を縛るバイアスは弱かったほうかもしれません。実際に、同僚や友人に勧めたりもしていました。

でも、別の面ではどこかに保守的な価値観を抱えていて、心の中で『あぁ、いい母になれていないな』と重荷に感じたり、人から少しそのことに触れられただけで妙にカチンとしたりしていたのを覚えています」

現在は、Yell株式会社の取締役


篠田さんのお話を伺いながら、「私を縛っているのは、私なのかもしれない」と思い、ハッとしました。次回は、「キャリア・育児を通して得られたもの、大変な時期を実際にはどう乗り切っていた?」をテーマにお聞きします。

聞き手・文/代麻理子

 

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