インターネット上の誹謗中傷が社会問題となっていることから、政府が発信者の特定を容易にする法改正の準備を進めています。匿名を隠れ蓑に、相手に対して誹謗中傷する行為は言語道断ですが、そもそも論理性に欠ける日本社会では、正当な批判と誹謗中傷の区別がついていない人も少なくありません。

 

暴力的な誹謗中傷ではなく、まっとうな批判をしているつもりでも、客観的に見ると、その内容が批判になっていないというケースもよく見られます。つまり正当な批判を行うためには、ルールに基づく必要がありますが、そうした共通認識は薄いというのが現実です。以下では、正当な批判になっていない言い回し、使わない方がよい言い回しについて、具体例をあげて説明したいと思います。

1.「ふわふわしている」
近年、よく耳にする言葉ですが、批判的な意味合いとして使われる場合には、「曖昧な」「論旨が明確ではない」といったニュアンスと考えればよいでしょう。この言葉を批判に使わない方がよい理由ははっきりしています。それは、指摘している内容が自分自身にもあてはまるからです。

相手に対して「曖昧」「非論理的」であると批判しているわけですが、「ふわふわ」しているという言い方自体が「ふわふわ」しています(つまり曖昧で要領を得ません)。批判の対象となる言動を自分自身が行っているというのはどうにもいただけません。もし、相手の論旨が不明瞭であれば、具体的な箇所を明示した上で指摘すれば済む話です。明示的に批判ができないので、こうした「曖昧な(ふわふわした)」言い方になっていると思われますが、それでは相手を正当に批判することはできません。

2.「突っ込み所満載」
SNSや掲示板などでは、相手の発言や文章に対して、「もう突っ込み所満載ですが……」などという言い回しで批判している人を数多く見かけます。しかし不思議なことに「突っ込み所満載」といっておきながら、具体的にどの部分が間違っているのか列挙する人はほとんどいません。本人はメッタ斬りにしたつもりかもしれませんが、第三者から見ると、「それはお前の方だろ!」と突っ込みたくなってしまいます。

もし、論理的におかしいところ、あるいは事実関係について誤認しているところが本当に100カ所あるならば、100カ所列挙すればよいだけの話です。わざわざこうした表現を用いているのは、内容ではなく感情が優先した結果でしょう。相手のことが気に入らないものの、具体的に指摘できないので、あたかも間違いがたくさんあるかのように印象操作したいとの心理が働いていると思われます。

 
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