これまで「投資の基本」についてお伝えしてきましたが、「投資信託を買いたいけれど、最初の1本の選び方がわからない」という声にお応えして、プロ中のプロにお話を伺うことに。
中立的に投資信託を評価する会社の代表である朝倉智也さんに、マネーコラムニスト西山美紀と、証券会社に口座を作って足踏みしている投資超初心者の編集・片岡が、今回は「投資信託の買い方のコツ」について伺います。

<今回お話を伺ったのは……>

 

モーニングスター代表取締役 朝倉智也さん
慶應義塾大学卒業後、銀行、証券会社にて資産運用助言業務に従事後、95年米国イリノイ大学経営学修士号取得(MBA)。同年、ソフトバンク株式会社財務部にて資金調達・資金運用全般、子会社の設立、および上場準備を担当。98年モーニングスター株式会社設立に参画し、2004年より現職。第三者投信評価機関の代表として、常に中立的・客観的な投資情報の提供を行い、個人投資家の的確な資産形成に努める。YouTube「ファンドの視点」に出演中。

 

ショックを乗り越えつつ、右肩上がりの世界経済の波に乗る?


西山:これまでミモレでも「投資信託の積み立て」についてお伝えしてきたのですが、投資初心者の方から「いざ買おうと思っても、どうしたらいいかわからない」という声があるんです。

片岡:まさに私がそうでした!ネット証券会社で口座を開設することも恐る恐る(笑)、口座を開いても「どれを買えばいいの?」とわからなくて……。ファッションやメイクもそうですけど、「信頼できる人と同じもの買いたい」という思いがある女性は多いかもしれません。投資の場合は失敗して大損するのも怖いですし。

西山:「しっかり知識を得てから決めなきゃ」と思うと、身構えてしまいますよね。そこで、中立的な立場で投資信託を紹介している朝倉さんに、投資初心者の方向けにぜひいろいろ教えていただけたら、と思いまして。

朝倉:そうでしたか、ありがとうございます。今年のコロナショックのときに、証券会社の口座開設が増えたと聞いています。投資に関心がある方は増えていますよね。

西山:やはり増えているのですね。とはいえ、「コロナの影響が長引くのではないか」「世界的に経済が深刻な状況で、投資をしても大丈夫なのか」と不安を感じる人もいます。

朝倉:確かに、世界的にも難しい局面にきていると思います。ですが、経済と株価の動きは、異なることも多いんですよ。もちろん世界経済が成長すれば、株価も上昇するのが基本ですが、過去のリーマンショックやインターネットバブルの際も、経済が冷え込んでも、新しい産業とベンチャー企業などがどんどん出てきました。

例えば、iPhoneが出たのが2007年です。わずか12、3年の間に、ここまでiPhoneが普及し、進化すると思っていた人はわずかではないでしょうか。アマゾンも、インターネットバブルの際に大きく暴落しましたが、現在は大きく成長しています。

西山:時代をピンポイントで見ると不安になったり、悲観したりしてしまいますが、長い目でとらえてみれば、経済活動はずっと続いていて、それぞれで豊かな社会を目指していますね。

朝倉:はい、そうなんです。今後、AI(人工知能)やIoT、ブロックチェーンなどの産業が次々と生まれれば、関連する企業の株価は、経済とともに上がっていくでしょう。株式の価値も世界でトップクラスに入ってくるかもしれません。
今は百貨店や航空、旅行、飲食店などの業界が厳しい状況ですが、かといって、今アメリカのIT業界でトップを走っているGAFA(Google、Apple、Faceboook、Amazonの4つの会社)も、今後どうなるかはわかりません。

日本では今でも自動車会社が産業のトップクラスにいますが、今後電気自動車や車のシェアリングが普及すれば、マイカーを買わない人が増えてくるでしょう。2022年の北京オリンピックでは電気自動車や無人自動車がガンガン走っているという予測もあります。

西山:私たちの小さいころとは考えられないくらい、科学技術が進んでいますね。

朝倉:世界の株価の時価総額は、何十年もの長い目で見ると、確かにアップダウンはありますが基本的に右肩上がり。長い目で見て、今後世界経済が上向くと考えるのなら、「世界全体の株式に投資するタイプの投資信託」を買っていくという手もあります。

片岡:そういう考え方をすればいいのですね。といっても、投資信託は数が多くて、証券会社のサイトを見ても結局どれがいいかわからないのが本音です。

朝倉:投資信託の数は増え続けていますね。国内の投資信託は、2006年ごろは2000本くらいでしたが、今は6000本ですから。

片岡:6000本!

朝倉:とはいっても、実際に売れている投資信託は、そのうち20~30本くらいです。コストが低いものなどに絞れば、買うべき投資信託の数は少ないといえます。

西山:コストについては、投資が初めてという方は要チェックですね。銀行にお金を預ける分には、基本的にコストがかからないので、なじみがないかもしれません。

朝倉:そうですね。投資信託を買う際には、「販売手数料」と「信託報酬」という2つのコストがかかることを頭に入れておきましょう。

 

まず「販売手数料」とは、いわば「購入時の手数料」です。最近は0%の“ノーロード(ロードとは、手数料という意味)”の投資信託が増えてきましたが、金融機関によっては、1~3%程度かかるものもあります。同じ投資信託を買うとしても、金融機関によって0%だったり、3%だったり異なるので要注意です。買うたびに3%かかったら、パフォーマンスが3%出たとしても、結局プラスマイナスゼロになってしまいますから、できれば0%のものを選びたいですね。

片岡:20〜30本のなかからチェックすればいいなら、なんとかできそうです。

朝倉:それからもう一つ。投資信託を持っている間、毎年かかる手数料のことを「信託報酬」といいます。これは「運用手数料」のようなもの。運用会社に手数料が入らないと商売になりませんから。

同じような投資信託であれば、できるだけ安い信託報酬のものを選びたいですね。将来の相場の動きは自分でコントロールできませんが、支払うコストは事前に確認して、おさえることが出来るので、しっかり確認しておきましょう。

それから買い方も重要ですよ。ポイントは「積み立て」です。

 
  • 1
  • 2