長期・分散・積立の3原則で

投資初心者へ「投資信託の買い方のコツ」をプロが伝授【モーニングスター朝倉智也さん】_img0
 

片岡:これまで取材してきてのお金のプロの皆さん、口をそろえて「積み立てがいい」とおっしゃいますが、やはりそうですか?

 

朝倉:コロナショックやリーマンショックなど、相場が大きく下がったときにドン!と一括で買えればいいですが、なかなかそううまくはいきません。実際には、怖くなって買えない人が多いからです。

片岡:おっしゃる通り、コロナ禍でずっと「いつ買ったらいいんだろう、いつが下がったタイミングなんだろう」、と気にしていましたが素人には結局分からず、今になって「下がったのは3月だったのね」と知るという……。

朝倉:逆に高いときに「もっと上がるかも」と思って、結果、高値で買ってしまったということもあります。
一括投資をしようとすると、自分が買った金額より「上がるか、下がるか」にものすごく敏感になって、心理的な負担になります。なので私は一括でドン!と買う方法はすすめていないんです。

片岡:よくわかりました。

朝倉:長期で考えて小さな金額で積み立てていれば、相場が下がっても「安く買えるチャンスだ」と喜ぶことができます。また、「いくらで買ったかな」なんて気にしなくなる。そこもいいポイントですね。

西山:私もリーマンショックのときに怖くなって株を売ってしまった失敗経験があります。当時積み立てていた投資信託は、そのまま続けているのですが大正解でした。積み立てなら、何があっても慌てずに済みますね(笑)。

片岡:では積み立ての場合は、どんなタイミングで始めたらいいのでしょうか。つい初心者なのに「安く買いたい」と思ってしまって、なかなか買えないんです。

朝倉:まさに「思い立ったが吉日」です。月1万円ずつ積み立てたとして、10ヵ月で10万円ですよね。その途中で今回のようなコロナショックがあったとしても、相場の動きがありますから、10ヵ月後には、元手の10万円が9万3000~5000円くらいに減るようなイメージしょうか。一時的に5000円前後の損失なら、あまり気にならないのではないでしょうか?価格が下がったタイミングで量を多く買うので、相場が少し戻れば、儲けが出ます。また、20年間積み立ての運用をするなら、1回のタイミングは240(12ヶ月×20年)分の1なので、積み立てで買うタイミングを気にしても仕方ないでしょう。

だから、多少下がっていたとしても、上がっていたとしても、「いつ買うか」といったら、まさに「今でしょ」なんです(笑)。

片岡:それなら、気軽に今すぐ始めてみます!

西山:積み立てなら、最初に設定すれば、あとは自動で銀行などから引き落としされて、投資がどんどん進んでいくのも楽ですね。

朝倉:はい、毎月1回、20日や25日など給料日の翌日など、人それぞれで好きな日に設定をして、積み立てていくといいでしょう。

西山:投資初心者の方は、まずはお試しで月1000円くらいで始めてみて、慣れてきたら、具体的な資産形成を考えるという方法もありますね。

その後、どうやって資産を形成していくかは、朝倉さんのご著書『全面改訂 投資信託選びでいちばん知りたいこと』(ダイヤモンド社)で順を追って考えることができて、わかりやすかったです。

朝倉:ありがとうございます。みなさんもよろしければぜひご覧ください(笑)。投資超初心者の方は『ものすごく真っ当で、ありえないほど簡単なお金の増やし方』(幻冬舎)を先に読んでいただくのもおすすめです。

投資初心者へ「投資信託の買い方のコツ」をプロが伝授【モーニングスター朝倉智也さん】_img1
 

ちなみに、私たちは、中立の立場で投資信託を評価する機関ですので、様々な視点でリサーチしています。弊社モーニングスターのYouTube「ファンドの視点」では、投資信託に対して「これはコストが高い!」などと、結構厳しいことを言ったりもするんですよ(笑)。

片岡:10分くらいでズバッと投資信託の良し悪しを本音で聞けるのはありがたいですね。この取材前に私も見てみたのですが、ちょうど購入を迷っている投資信託の解説があって参考になりました。評価することで競争が生まれて、よりよいサービスにつながりそうですね。

西山:実際に投資信託のコストもどんどん安くなっていますものね。消費者にとっては投資信託を買いやすい時期ともいえそうですね。

朝倉:はい、過去には販売会社から、投資信託のリスクやコストについて詳しい説明がないまま売られていたケースもたくさんありました。60〜70代だと投資信託で損した、という人も多いのではないでしょうか?

1点、大前提として、投資信託は運用商品なので、元本保証の預金とは異なります。「価格の変動があること=元本割れリスクがあること」は頭に入れておいてください。
また、売買のタイミングが非常に難しいので、積み立てをして、できるだけ長く持ちましょう。最低5年間、長くて10年間といったスパンで考えたいですね。

さらに「分散」させるために、投資先を分けるのがコツ。今はヨーロッパの株が不調ですが、今後どうなるかはわかりません。予測ができないからこそ、分散させることが大切なのです。

片岡:今度は投資初心者が買うべき投資信託を具体的に教えてもらいたいです!

撮影/山本遼
取材・文/西山美紀
構成/片岡千晶(編集部)

 

前回記事「お金のプロに聞く「10万円の特別定額給付金、どう使うのが正解?」」はこちら>>

 
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