もはや社会現象となりつつある火曜ドラマ『私の家政夫ナギサさん』。ここへきて、ドラマが描きたかったものも、よりクリアに見えてきたような気がします。しかし当初は、大ヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』と同じ系統ではないかと思われていたため、真の見どころに気づくのが遅れた人も多かったよう。なぜそのような思い込みが起きてしまったのか、このドラマが本当に描こうとしていたものは何なのか、考察してみました。
こちらはドラマの再放送を記念した人気記事の再配信です。元記事は2020年9月に配信しました。
第5話から視聴率が急上昇!
『私の家政夫ナギサさん』の視聴率が、ここへきてスゴイことになっています。
直近の第6話の平均視聴率は16.0%。10%を越えれば御の字と言われる昨今の連続ドラマ市場において、20%を狙おうかという勢いです。何かと設定が似ていたことから比較された、あの大ヒットドラマ『逃げ恥』ですら、16%台に乗せたのはようやく8話目にしてのこと。
これはひょっとしたら『半沢直樹』をすら抜いてしまうかも……なんて戯言にも、「まさかぁ~」とは言い切れなくなってきたほどです。
実は『ナギサさん』は、初回放送から好評を博してはいましたが、視聴率は第2話から第4話にかけて、12.8→12.7→12.4とわずかですが下降線を辿っていました。それが第5話にして14.4%といきなり2%もアップ。それだけでも驚くのに、第6話では、そこからさらに1.6%上昇。第5話と第6話の2話だけで3.6%も押し上げてしまったのです。ここまでの劇的な上昇となると、それは何かしらの物語の変化を反映しているはず。では一体何が変わったのか、私なりに少し掘り下げてみたいと思いました。
視聴率が上昇に転じる前の、第4話までの物語を簡単にお伝えしておきましょう。生き馬の目を抜く製薬業界でMR(医薬情報担当者)として働いている主人公のメイ(多部未華子)は、仕事では超優秀で、28歳にしてチームリーダーに抜擢されるほど。ところがひとたびプライベートになると、家事が全くできず、部屋は散らかり放題。妹から「このままだったら自然死しちゃいそう」と心配される有様。つまりメイは、仕事の能力は高いけれど家事の能力はゼロ、という女性なのです。そこでスーパーおじさん家政夫・ナギサさん(大森南朋)を雇うのですが、そこに立ちはだかるのが、家事ができないコンプレックスを抱える母親。「あなたはやればできる子よ」と、仕事だけでなく家事も完璧にやれる娘を望みます。結果、メイは頑張り過ぎて倒れてしてしまうのですが、それを助けたのがナギサさん。そして、「メイさんのできるところだけでなくできないところも見てあげてください」というナギサさんの言葉に、“お母さん”の呪縛にかかっていた母親の心も氷解していくのです。
……と、ここまでが第3話までのストーリー。第4話は、晴れて母親公認のもとナギサさんを雇ったメイは、仕事に集中できるように。そうしてライバル会社のMRで隣に住む田所(瀬戸康史)とちょっといい雰囲気になる、というものでした。
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