貧血を起こす3つの原因

「貧血には鉄」は本当?医師が語る「かくれ貧血」との違いと予防法_img0
 

では、貧血はどのような原因で起こるのでしょうか。

原因は、そのメカニズムによって大きく3つに分類することができます。

 

一つ目は、出血です。体のどこかから血が出てしまい、それに応じた血液の生産が追いつかない場合、赤血球が不足し貧血をきたします。身近な例では、女性の生理が挙げられます。毎月のようにやってくる生理で、女性は閉経を迎えるまで出血を経験し続けます。この生理の出血量に赤血球の生産が追いつかなくなると、貧血をきたすことになります。これが女性で貧血が多い理由です。

二つ目は、赤血球の破壊です。例えば、体をウイルスや細菌などの外敵から守ってくれるはずの免疫が自分の赤血球を攻撃し始めてしまう自己免疫性溶血性貧血という病気があります。この病気では赤血球が壊されてしまい貧血が生じます。

三つ目のメカニズムが、赤血球の産生低下です。赤血球を含むあらゆる血液の細胞は、大きな骨の中、骨髄というところで作られています。骨髄という場所はいわば赤血球の工場です。仮にこの工場になんらかの異常が起こると貧血が生じます。例えば、骨髄で生じるがんである白血病や多発性骨髄腫といった病気では、血液の工場ががん細胞で埋め尽くされてしまい、正常な赤血球が育てられなくなります。

あるいは、この赤血球をしっかりと育てるには、特定の栄養素が必要で、それらが足りなくなることでも貧血が起こります。その栄養素の代表格が、葉酸とビタミンB12です。葉酸は読んで字の如く「葉」に多く含まれ、ビタミンB12は肉やレバー、貝類などに多く含まれるビタミンです。例えば、極度の偏食があってこれらの栄養素が不足すれば、貧血になってしまいます。

また、赤血球の赤い色素、ヘモグロビンを作るには鉄分が欠かせないことも知られています。鉄分が不足すると、ヘモグロビンが作れなくなり、貧血となります。「貧血は鉄分が足りないからだ」と言われるのはこれが所以であり、実際鉄欠乏は貧血の最も多い原因の一つです。


「鉄分不足」の落とし穴


実はこの鉄欠乏、出血とも大きく関連しています。実は、出血が繰り返し起こると、赤血球とともに、それと結びついた鉄分も大きく失われてしまいます。そうなると、出血で失われた分の赤血球を産生するのに支障をきたします。

生理中の女性で貧血がなかなか良くならないという方は、実はここにも原因があるのです。単に赤血球が生理の出血で失われてしまうというだけでなく、鉄分も失われてしまい、赤血球を作れなくなってしまっているのです。このため、鉄分を補充することがとても大切になります。

もし男性で鉄欠乏が見つかったら、女性のように生理で出血するという理由がないわけですから、他に理由を探さないといけません。その代表格が胃や腸からの出血です。例えば出血の原因として、胃潰瘍のような病気が見つかることがあります。あるいは、鉄欠乏をきっかけに胃や腸のがんが見つかるという場合もあります。これは、生理の出血がひどくない女性に深刻な鉄欠乏が見つかった際にも同様のことが言えます。「鉄欠乏を見たら出血を疑え」というのは医療者の中での常識でもあります。鉄欠乏と診断されたら、胃カメラや便の検査などを受け、胃や腸からの出血がないかを丁寧に探す必要があります。

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