『半沢直樹』に夢中になった人ならわかる『梨泰院クラス』の魅力


日曜夜に強烈なインパクトを残すドラマ『半沢直樹』に夢中になっている方にオススメしたいNetflix作品は『梨泰院クラス(イテウォンクラス)』です。韓流ブーム再来のきっかけを作った『愛の不時着』と並ぶNetflix2大人気の韓国ドラマという触れ込みだけが理由ではありません。やられたらやり返す。そんな真剣勝負のビジネスバトルが繰り返される『梨泰院クラス』も夢中になること間違いなし。

Netflixオリジナルシリーズ『梨泰院クラス』独占配信中
 

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韓国のモテ男、パク・セロイを応援したくなる理由


顔芸満載で「倍返し」の決めセリフを放つ半沢直樹は日本を代表する愛すべきキャラクターのひとりですが、『梨泰院クラス』でイケメン5大韓流スターのパク・ソジュンが演じる主役パク・セロイもそれに負けず劣らず。トレードマークの「いがぐり頭」の出で立ちからしてインパク大。どん底から何度も這い上がり、小さな居酒屋から飲食ビジネスの業界トップにのし上がっていく姿につい応援したくなる魅力があります。

主人公のパク・セロイ。Netflixオリジナルシリーズ『梨泰院クラス』独占配信中

それというのも、キャラクターの背景をしっかり描いてくれるから。セロイの人となりの全てが過去と繋がっていることは序盤戦を見れば一目瞭然。それゆえに彼の頑固さに母性本能をくすぐられ、少なげながら発する言葉に深みを感じるのです。生きづらい世の中に光を照らしてくれるような台詞の数々が共感を呼んでいます。

例えば、セロイが韓国ソウルの繁華街・梨泰院で開店した「甘い夜」を意味する居酒屋「タンバム」を命名した理由を話す台詞もそのひとつ。

「うすら淋しい人生の苦い夜が、そして俺の人生が少しでも甘くなればいいかなと」。

控えめで実直、決してあきらめないセロイのキャラクターがこの言葉にも集約されています。好きにならずにはいられないモテ男の魅力にきっとハマるはずです。

するかしないか。こだわりの「土下座」シーンも満載


仲間に恵まれながら、手ごわい敵を復讐するストーリーも『梨泰院クラス』の面白さにあります。セロイの宿敵は大財閥の「チャンガ」ファミリー。金と権力の亡者と化したチャンガの会長と、その御曹司で愛情に飢えた、いじめっ子との因縁対決がじっとりと進んでいきます。その引き金となる「土下座」シーンも登場。するのか、一体しないのか。じらされつつ、アジアで共通する謝罪パフォーマンスが見せ場のひとつになっています。

巨大飲食チェーン、チャンガグループの会長チャン・デヒ。Netflixオリジナルシリーズ『梨泰院クラス』独占配信中

格差を見せつけられる憎き相手に物ともしないセロイですが、居酒屋「タンバム」で働くワケあり仲間の存在が彼の復讐計画を具体的にさせていきます。そして、苦く孤独な夜を甘く心を通わせる夜にさせていくのです。緊張感あふれるビジネスバトルに加えられたその青春物語は決して嫌味なく、緩急をつける役割を持たせています。回が進めば進むほど、仲間のシーンは見ているこちらまでホッとします。セロイと同様、その仲間ひとりひとりも孤独と闘ってきた共通点があることも知らされ、なかでも「タンバム」の料理長マ・ヒョニ(イ・ジュヨン)がカミングアウトする回は名セリフ続出です。

「お前をよく知らない人に無理に分かってもらう必要はないんだ」。

セロイがヒョニの背中を押したこの言葉は、人間関係で悩む時に目の前が開けるようなパワーワードかもしれません。

夢をたっぷりみさせてくれる美しいザ・韓流ラブストーリーを期待している人には、もしかしたら物足りなさを感じてしまうのかもしれません。セロイと淡く切ない職場恋愛を見せてくれるチョ・イソ(キム・ダミ)や、セロイの初恋の相手オ・スア(クォン・ナラ)はむしろ、ジェンダーエンパワーメントの指数を高める役割も担っています。彼女らの有能っぷりに共感を覚えそうです。

チョ・イソ。Netflixオリジナルシリーズ『梨泰院クラス』独占配信中
セロイの初恋の相手オ・スア。Netflixオリジナルシリーズ『梨泰院クラス』独占配信中

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『梨泰院クラス』は王道の韓流ドラマとは一味違う路線ですが、登場人物のキャラクターをとことん濃厚に描き、思わずシェアしたくなるセリフの数々は一見の価値あり。これをきっかけに韓流沼にハマる危険性は高まるでしょう。

次週は、『コンフィデンスマンJP』にハマった人におすすめのドラマをご紹介します!

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著者一覧
 

映画ライター 細谷 美香
1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。

文筆家 長谷川 町蔵
1968年生まれ。東京都町田市出身。アメリカの映画や音楽の紹介、小説執筆まで色々やっているライター。著書に『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』(洋泉社)、『聴くシネマ×観るロック』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、共著に『ヤング・アダルトU.S.A.』(DU BOOKS)、『文化系のためのヒップホップ入門12』(アルテスパブリッシング)など。

ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。男性俳優インタビュー集『役者たちの現在地』が発売中。twitter:@fudge_2002

メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。

ライター 西澤 千央
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1983年生まれ、東京都出身。TV番組制作会社、映画系出版社を経てフリーランス。好きな言葉は「タイムセール」「生(ビール)」。18年に大腸がん発見&共存中。

ライター 木俣 冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書に、講談社現代新書『みんなの朝ドラ』をはじめ、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』ほか。企画、構成した本に、蜷川幸雄『身体的物語論』など。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『連続テレビ小説 なつぞら上』などドラマや映画のノベライズも多数手がける。エキレビ!で毎日朝ドラレビューを休まず連載中。

ライター 渥美 志保
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1972年生まれ。6年間の会社員生活を経て、フリーライターに。『FRaU』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。

 
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