ウィズコロナの時代。収束の兆しは見えないし、アベノミクスの成果を実感しないうちにコロナ関連倒産が急増するというーー。
こんな息苦しい時代だから、思わず神や仏にすがりたくなってしまうけれど、「無宗教」な日本人が「にわか」に宗教にすがるのは、やっぱりムリ?『教えて釈先生! 子どものための仏教入門』の共著者で児童文学作家の谷口雅美氏が釈徹宗さん(如来寺住職で、相愛大学教授)にインタビュー。釈先生は「日本人は宗教性爆発の民族だ」と語ります。それって一体どういうこと?


挨拶と笑顔だけで「徳が積める」?


友だちに誘われて、大阪ミナミで「よく当たる」と評判の占い師さんにみてもらったときのことです。
最後にアドバイスとして、「状況をよくするために、徳を積みなさい」と言われました。「はい!」と返事をしたものの、お店を出た途端、「具体的に何をすれば?」と首をひねりました。それに、「自分の状況をよくしたくて、行動する」なんて、不純すぎて徳を積めないのでは?
餅は餅屋。「徳」と言えば、仏教です。
私の疑問に、浄土真宗のお坊さんで、テレビやラジオなどにもご出演されている釈徹宗さんは歯切れよく答えてくれました。
「機嫌よく挨拶したり、笑顔でいたりすれば、徳は積めます」
相手が「なんだか気分がよくなったな」と感じることがポイントなので、徳を積むぞ、という下心があっても構わないんだとか!

 

「悟り」のために『自分の都合メガネ』をはずしてみる


他にもいろいろと疑問を、釈先生にぶつけてみました。
「悟り」は、「生きていく上での苦しみをすべて解決した状態」だそう。私たちを苦しめているものに、イライラや不安などのネガティブな感情があります。
ネガティブな感情を引き起こす原因について、釈先生は「みんながそれぞれ、『自分の都合メガネ』をかけているからですよ」と言います。
かけているメガネが違うから、同じものを見たとしても、見え方や感じ方が違う。ひとつの物事でいろいろな意見があるのは、この『自分の都合メガネ』のせいなのです。
この『メガネ』の存在を意識していないために、多くの人が「自分が正しい」と思いがちです。そして、なぜ、自分の考えが理解されないのかと腹を立てたり、思い通りにならないと不安になったりします。
でも、この『自分の都合メガネ』を外すことで、「自分は」「自分が」「自分なら」という気持ちがなくなり、ありのままの姿が見えてきます。ありのままを受け入れるだけなので、ネガティブな感情も起きません。
「仏教は、私たちがどう生きていけばいいのか、というヒントにもなるんですよ」と釈先生が言う通り、「かけているメガネが違う!」と知っただけで、気持ちがラクになりました。
もっと早く、『自分の都合メガネ』のことを知っていたら、「あの人とうまくやれないのは、私のせい?」などと、人間関係でアレコレ悩まなくて済んだのに……。

日本は宗教性爆発の民族!


相愛大学で「比較宗教論」などを教える釈先生曰く、
「日本人はよく『無宗教です』と言うけれど、そうではないんです。特定の教団、宗派に属していないだけで、様々な宗教行事に参加している日本人は、宗教性爆発の民族なんですよ」。
お正月は近所の神社に初詣。お彼岸やお盆にはお墓参りに行き、盆踊りや夏祭りに参加して、クリスマスにはケーキを食べてプレゼントをもらう――意識していないけれど、釈先生の言う通り、私もいろいろな宗教行事に参加しています!
「そういった行事だけではなく、いつも使っている言葉の中に、宗教から来たものがたくさんあります」と釈先生が教えてくれたのは―。
「『玄関』は、仏教では『玄妙な道に入る関門』、つまり悟りへの入り口のことを言います。そこからお寺の建物の入り口を表すものになり、今では家や建物の入り口を指すようになったんです」
『挨拶』『上品・下品』も仏教からきた言葉。また、『愛』や『三密』など、私たちが知っている意味とは違うものもたくさんあるそうです。
知らないだけで、仏教や宗教は私たちの生活の中に溶け込んでいるんですね。
もっと詳しいお話を聴いてみたくなった方もおられるのでは?
ただ、いきなりお寺に行って話を聴く、なんてハードルが高いですよね。受け入れてもらえるのか、心配にもなります。
そんな方はぜひ、『教えて、釈先生! 子どものための仏教入門』を読んでみてください。
「ペットが死んでしまった。この悲しみをどう乗り越えればいい?」「お葬式はなんのためにする?」などの素朴で深い疑問に、釈先生が対話形式でわかりやすく答えてくれます。子どもだけでなく、大人にも読み応え充分の内容です。
身近にある仏教。『自分の都合メガネ』のように、ラクに生きていくためのコツもあるので、やたらと怖がって遠ざけるのはもったいない! 知った上で、自分なりの距離の取り方を見つけるのはどうでしょう。


試し読みをぜひチェック!
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こんな時代に「無宗教」な日本人がラクに生きるコツとは?_img0
 

「教えて釈先生! 子どものための仏教入門」
釈徹宗・谷口雅美:著 細川貂々:絵


仏教ってなんだろう?テレビでもおなじみの釈先生がやさしく子ども達との対話形式で教えてくれます。知ってるようで知らない、日本人との深い関わりがある仏教釈先生の子どもたちへのレッスンで面白いほどよくわかって、ありがたい、親子で楽しめる仏教入門細川貂々さんのかわいい仏教イラストもたくさん!


釈 徹宗(しゃく・てっしゅう)
1961(昭和36)年大阪府生まれ。浄土真宗本願寺派・如来寺住職。
相愛大学副学長・人文学部教授。大阪府立大学大学院修士課程修了。専門は宗教学。
著書に『法然親鸞一遍』『仏教ではこう考えます』『不干斎ハビアン』『宗教聖典を乱読する』『親鸞―救済原理としての絶対他力―』『落語に花咲く仏教 宗教と芸能は共振する』など。

谷口 雅美(たにぐち・まさみ)
兵庫県尼崎市在住。神戸女学院大学卒業後、SE、販売、事務、介護福祉士を経て、2008年より執筆活動を開始。「99のなみだ」「最後の一日」「99のありがとう」などの短編小説集に参加。
著書に『鳥と猫と君とボク』(共著)『大坂オナラ草紙』『泣き虫マジシャンの夢を叶える11の物語』。2011年よりFM尼崎「8時だヨ!神さま仏さま」のアシスタントを務める。


文/谷口雅美
構成/北澤智子