なぜ女性にだけ起こるのか?
では、このホットフラッシュ、一体なぜ女性にだけ起きるのでしょうか。
実は、女性ホルモンがこの鍵を握っているということが分かっています。女性は、閉経とともに女性ホルモンの量が低下していきます。この女性ホルモンの量のダイナミックな変動に体がうまく適応できず、体温調節のメカニズムに混乱が生じてしまうのです。普通であれば0.4度程度の体温の変化から体が少しずつ反応して、体温調整を始めますが、閉経前後の女性では、これよりも微々たる体温の変化を敏感に察知してしまうのです(参考3)。
体温が上昇すると、体の熱を逃がそうとして、体の表面に近い皮膚の直下を通る血管を広げます。すると、皮膚近くの血液量が増えるので、熱を逃がしやすくなるのです。この血管の拡張、血液の増加を人は「ほてり」として自覚します。また、熱を逃すために汗をかきます。閉経前後の女性では、このような反応がわずかな温度の変化で起こってしまうのです。
更年期障害の症状が、出やすい人というのもわかっています。ホットフラッシュのリスク因子として、肥満のある方、喫煙をする方、身体活動が少ない方で発症頻度がより高くなることが知られています(参考4)
これらの症状は、一般には50歳頃から出て、4~5年ほど続くと言われますが、全体の実に3割程度は10年持続するという報告もあり(参考5)、比較的多くの方が長い間付き合っていかなければならない症状であることが分かります。
ホットフラッシュとの付き合い方
では一体どのようにこのような症状と向き合い、付き合っていけばよいでしょうか。
まず朗報として、多くの方は特殊な治療を必要とせず改善するということが分かっています。実はとても簡単な工夫で、ホットフラッシュを抑えることができるのです。
できる工夫の一つは、体が体温の上昇に敏感になっているので、部屋の室温を比較的低めに保ち、扇風機を使うなど涼しい環境を維持するということです。窓を開け、風通しをよくしておくのも有効です。
また、寒い冬には着込む衣服の量を少なめにし、着脱しやすい服を着ておくことで体温調整をしやすいように工夫します。
人によっては、辛いものを食べる時やアルコールを飲んだ時に決まってこのホットフラッシュが出る、ストレスがたまった時に出る人もいます。このように引き金がわかっている場合には、引き金になりうる状況を避けることでも症状が改善する可能性があります。すなわち、辛いものやアルコールを控える、ストレスを溜め込まないようにリラックスするなどといったことです。
また、先に肥満の方は症状が出やすいと述べましたが、ダイエットや有酸素運動も有効な可能性のある治療法です。直接的な効果だけでなく、運動自体が持つ、ストレス解消効果も期待できます。ジョギングや水泳、自分に続けられそうな運動を選び継続的に行うことで、更年期障害に限らず、様々な健康面での改善が得られるでしょう。加えて、禁煙は、更年期障害に限らず有効です。
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