2020年1月、2020年度大学入試センター試験の様子。 写真:アフロ

近年、教育環境に格差が存在することを肯定する人が増えています。しかも、格差を肯定する人の大半が、比較的高い年収を得ている人たちです。

 

教育環境についての意見は様々ですが、一般論として、成功して豊かになった人は、環境が恵まれずチャレンジできなかった人を支援したいと考える傾向が強くなるものです。それにもかかわらず経済的に豊かな人たちの中で、格差を肯定する意見が強くなっているのは、どうしてなのでしょうか。

ベネッセ教育総合研究所と朝日新聞社が協同で行った調査によると、教育格差の存在について(所得の多い家庭の子どものほうがよりよい教育を受けられるという傾向についてどう思うか)、62.3%の人が是認している(「当然だ」「やむを得ない」と考えている)ことが明らかとなりました。

過去のデータと比較すると、2004年には格差を是認する人は46.4%と50%を下回っていましたが、2013年には59.1%に増加、2018年には60%を上回りました。

注目すべきなのは所得水準との関係です。経済的にゆとりがあると回答した人で、格差を是認している人は72.8%に達しており、経済的にゆとりがあると自覚している人の大半が、格差はあって当然と考えていることになります。

これはかなり注目すべき結果であると筆者は考えています。

日本という国は資源に恵まれておらず、人材を育成する以外に国を発展させる方法がないというのは、明治の近代化以降、全国民に共通する価値観でした。格差をゼロにすることは現実問題として不可能ですが、可能な限り機会の平等は保障されるべきという考え方に異論を唱える人は、少なくとも30年前まではほぼ皆無だったといってよいでしょう。

 
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