前回に引き続き大人シックな着物の装いを楽しむ女性たちをご紹介します。今回はオンスタイルにも着物を取り入れた上級者さん。なぜ仕事場でも着物を着ているのでしょうか。そこには思わず納得してしまう理由がありました。

 

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粋な縞着物に小物を効かせた大人スタイルの着こなし


川上千恵さん(56歳) 職業:自営業(酒類小売店) 着物歴:(日常でも取り入れ始めて)2年

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モノトーンにターコイズブルーの帯揚げと山吹色の帯締めをアクセントにした着こなしでお店に立つ川上さん。目立ちすぎず一歩控えた装いでお客様を迎えします。

20代で着付けを習い、慶事の席では着物を着ていたという川上千恵さん。2019年からは日常でも積極的に着物を取り入れるように。そこには女性なら誰もが感じる年齢による悩みがきっかけだったと教えてくれました。
50歳を過ぎ、ボディラインの変化が気になり始めたものの、ウエスト周りを隠すような服を着るのが嫌でフィットネスジムへ。5年間で納得できる体型を取り戻しましたが、何を着るのが自分らしく、年齢に合っているかを考えたそうです。そんなある日、何気なく着物を着て出かけてみると、周囲から大好評。以来、友人との会食などプライベートはもちろん、営んでいる酒屋さんでの接客やワイン会などのイベントでも頻繁に着るようになりました。
着物を着ると、自然と姿勢や仕草を意識すると言います。その所作は試飲でお酒を注いだり、お会計などのふとした姿に現れ、お客様の心を和ませているに違いありません。

Instagram:@chie.pinot伝統美、特別感。着物は年齢を重ねることでさらに美しさが表現できる衣服だと思います。


シャリ感のある大島紬に小花柄の帯を合わせた甘辛ミックス


清水紫織さん(41歳) 職業:発酵料理教室/発酵オンラインショップ主宰 着物歴:5年

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料理教室の玄関先でお母様の大島紬を着て。白い半衿を控え目に見せることで、すっきりとした印象に。

発酵食品に着目した料理教室「神楽坂発酵美人堂」を主宰する清水紫織さん。ご実家が呉服業を営んでいたにもかかわらず、若いころはまったく興味がなかったそうです。
しかし、日本古来の発酵食品の奥深さを知ると、着物の美しさにも目がいくように。30代半ばになってお母様に着付けを習い、普段でも着るようになりました。
現在、自身の料理教室には必ず着物で。動きやすさは洋服に敵わないし、とても暑いそうですが、動きに制限が生まれることで、普段よりも丁寧な動作になるそうです。そこには、着物が生み出す「ときめき」を生徒の方々に感じて欲しいという清水さんの気持ちが込められています。滋味深い発酵料理の美味しさとともに、視覚でも楽しめる料理教室。古民家をリノベーションした空間には、日常の忙しさを忘れる時間が流れています。

Instagram:@hakko_bijin隠したいところをそっと隠し、女性を美しく見せる着物。生地や色、柄に日本人の美意識が凝縮され、着る人だけでなく、その周囲にも非日常感、特別感を与えてくれます。


エルメスのスカーフを帯揚げに。ルールに捉われずセンスで遊ぶ


山中みきさん(31歳) 職業:ジャズピアニスト 着物歴:4年

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「着物でジャズ」というストリーミングコンサートにお祖母様の単衣の着物で。名古屋帯の上に博多帯の端切れを巻き、帯揚げはエルメスのスカーフという個性的な組み合わせですが、時代を経て継がれた着物によって、クラシカルで品のある装いです。(Alma Macbride)

ニューヨーク在住のジャズピアニスト、山中みきさん。着物をよく着ていたお母様の姿に憧れ、4年前に一時帰国したタイミングで着付け教室へ。短い滞在期間にどうしても着られるようになりたいと希望を告げ、短期の個人レッスンを組んでもらったそうです。
ニューヨークに戻ってからは年に数回、オペラ鑑賞やパーティで着る程度でしたが、ロックダウンを機に変化します。予定していたライブのほとんどが中止になり、時間に余裕が生まれたことで、すべての仕事先に着物で出かけるようになりました。そして着物コンサートを開催して以来、頻繁にステージ衣装として着るようになり、演奏だけでなく日本人として着物の文化を発信できる幸せを実感しています。
山中さんの着物はすべてお母様やお祖母様、友人から譲り受けたもの。中でも、彼女が生まれる前に亡くなったお祖母様の着物に袖を通すと、会った事のない故人の温もりを感じることができ、自分で着られるようになってよかったと心から感じるそうです。
着物を楽しみ始めて4年。今でも着る前日にコーディネートで悩む時間が楽しくて仕方がないと答えてくれました。

Instagram:@mikimikiyummyNYでは誰も「こう着なくてはいけない」ということを知りません。何より「やりたいようにやればいい」という自由な文化が私の背中を押してくれ、着物のおしゃれを楽しんでいます。


色のコントラストや素材にこだわるカジュアルスタイル


前田呼子呂さん(42歳)職業:着物販売 着物歴:17年

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仕事の日はもちろん、休日のお出かけもほとんどが着物。行く場所や季節、お出かけメンバーに合わせてコーディネートを考えます。この日は黒×ビビッドなピンクの小紋にレースの半衿を合わせ、オリエンタルテイストの居酒屋さんへ。

前田呼子呂さんのきもの道は25歳の夏、「花火大会は浴衣で行くから、なかったら買ってね!」と友人から半ば強引!?に誘われたことから始まります。その日のうちに着物屋さんへ。浴衣を試着した瞬間、まるで恋に落ちたかのような衝撃で魅了されたと言います。そのまま書店へ行き着付けの本を購入し、何度か練習して花火大会で浴衣を楽しむことができました。その夏はさまざまな場所で楽しみ尽くし、季節が変わるころには単衣の着物を揃え、手軽に結べる半幅帯で着物のお出かけを楽しむようになったそうです。
当時はフリーターをしながら外国巡りをしていた前田さんでしたが、着物への興味は増すばかり。「着物屋さんで働けば、着付けがうまくなるかもしれない」という理由で呉服業界に就職します。それから15年。今も尚、大好きな着物をまとい、お客さまに囲まれ充実した日々を送っているそうです。
店頭での着物スタイルはほぼ半幅帯で。また、名古屋帯のときは背負うだけの簡単な「作り帯」にしているという前田さん。お客さまに「これなら簡単そう」と感じてもらい、日々のおしゃれにもっと着物を着て欲しいという思いが込められています。

Instagram:@kokoro.kimono顔と手しか出さず、見せたくないところは見せずに個性あるオシャレが楽しめる着物。布そのものにも力がありますが、柄オン柄の組み合わせにも魅力を感じます。


お客様に「魅せる」美しさは、毎日の生活にも


着物は袖や裾さばきに配慮が必要です。すると普段よりも動作は自然と落ち着きを払い、そこに余白が生まれます。そのたおやかさを知る着物美人の皆さんは、ビジネスの場でお客さまや生徒の皆さんに日本の美しさをお裾分けしていました。
着物が生み出す振る舞いの美しさは、生活のあらゆるシーンで役に立つはず。着物が着られるようになったなら、たくさん着ること楽しむこと。それこそがSNSでも着物美人に近づく方法かもしれません。
 

SNSで見つけたリアル着物美人スナップを一挙に見る
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① 川上千恵さん 目を引く発色の鮮やかな色無地の着物に、白地の帯を合わせて上品な装いに。

 川上千恵さん(右から2番目) 親しい友人との気軽な食事会では、シックにまとめたり明るく華やかに見せたりと、色の組み合わせを楽しんでいるそうです。

③ 清水紫織さん 主催する料理教室では自宅で洗える近江縮(麻)に沖縄のミンサー半幅帯を合わせて。さらにたすきを掛けて動きやすさを重視します。

④ 清水紫織さん(写真中央) カジュアルなパーティではワンピース感覚で着物を。ヘアスタイルもポニーテールでカジュアルダウン。洋服の中でも浮かないようにしています。

山中みきさん 古典的な花柄の浴衣にラフなアップスタイルとポップなマスクでストリート感あふれる着こなし。自由で大胆な発想がニューヨークの街並みとリンクします

⑥ 山中みきさん(左から3番目) 結婚パーティにはお母様からいただいた訪問着で出席。フォーマルな着物にお祝いの気持ちを込めて。

前田呼子呂さん 粋な縞の木綿着物を着てお出かけした先は神楽坂。黒レースの半衿に大胆な色と柄の半幅帯を合わせ、柄オン柄のコーディネート。

⑧ 前田呼子呂さん 黒地に格子模様のシックな着物ですが、レースの半衿や花柄の足袋など小物に遊び心を。自分らしさを出しながらカジュアルな着こなしを楽しみます。



取材・文/笹本絵里

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