夫に内緒でアパートを借り、ひとりで過ごす時間をつくる
その後も夫に心を折られる出来事があり、Cさんは夫に内緒で近所にアパートを借りました。幸いCさんは仕事を続けており、アパートを借りるだけのお金があったのです。
時間を見つけてはアパートに行き、そこで数時間過ごしてから家に帰る生活を一ヶ月ほど続けたときのこと。新聞でふと目にした発達障害の記事を見てCさんは驚きます。そこに書かれていたことが夫の行動と重なったのです。そしてCさんは著者の真行さんのカウンセリングルームを訪れます。
真行さんは、自分の心を守るため、自らアパートを借りるという行動を起こしたCさんを支持し、こう声をかけました。
「夫に発達障害特性があるからと言って、特性に起因すると思われる行動のすべてを受け入れたり、従ったりしなくていい」
「夫の発達障害を理解し、適切な対応を心がけることは大切だが、許容できない場合や努力の限界を超える場合は、その旨を伝えたり、これ以上の努力をしない権利がある」
背中を押されたCさんは、夫に別居を切り出しました。夫の反応は「お前が家賃を払うならいいんじゃないの」の一言。自分が長い間悩んできたことの重みを夫はわからないのだとさみしく感じつつも、気持ちが吹っ切れたといいます。
ときどき顔を見に行き世間話をする“茶飲み友達婚”
現在Cさんはアパートで快適なひとり暮らしを満喫しています。
夫も身の回りのことは自分でしているようで、特に困ったこともない様子。たまに様子を見に行くと、「よう来たな」と迎えてくれ、世間話をするそうです。話をしている途中で夫の機嫌が悪くなったら、さっさとアパートに引き上げることができるので安心。住まいを分けることで、いい距離感を保ちながら夫婦関係が継続しています。Cさんは後にこう語っています。
「夫に病院を受診させて、発達障害かどうかをはっきりさせるつもりはありません。夫の中には自分以外の人の存在が小さく、それを変えさせるのは無理だと感じます。今の生活スタイルは一般的ではないかもしれませんが、夫とは茶飲み友だち夫婦として、しばらくは別居を続けていくつもりです」
(『私の夫は発達障害?』より)
限界以上の努力はしないと決め、夫と物理的に距離をおき、自分だけの安全地帯を持つことで、夫婦関係が良好に継続しているCさん。夫婦にはそれぞれの幸せの形がある、という実例ですね。
『私の夫は発達障害?』では、このほかにも様々なカサンドラ妻と、それぞれの回復法が紹介されています。うちももしかして……と心当たりがある方は、ぜひ手にとってみてください。
『私の夫は発達障害?』
著 真行結子 監修 柏淳(ハートクリニック横浜院長)
発達障害特性のある夫との関係に苦しみ悩む妻。「変わらない夫」とどうやって距離をとり、自分自身の人生を幸せに生きていけばいいのか……。本書では、6組の夫婦のエピソードと、発達障害当事者である夫の体験談を例に挙げ、具体的な回復方法を紹介しています。自らもカサンドラ症候群を体験し、カサンドラ支援団体の代表も務める専門カウンセラーだからこそ伝えられる、苦悩する妻の背中を後押しする一冊!
構成/宮島麻衣
第1回「【診断】私の夫は発達障害?専門家が教える判断基準と対処法」>>
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