経過措置があるとはいえ、通帳がなくなることに驚いている人も多いと思いますが、実は通帳という仕組みを導入している国は世界的に見ても珍しい部類に入ります。大抵の国では預金通帳というものは存在せず、毎月、ステートメントと呼ばれる取引報告書が送付され、それで残高や取引を確認するのが一般的です。各国ともネットバンキングの普及でステートメントがそのままWebに移行しており、日本もそれに近い仕組みになるでしょう。
銀行側の最終的な狙いは店舗網とATM網の縮小によるコスト削減ですから、今後は店舗でサービスを受けると多くの手数料を取られる可能性が高くなります。すでに一部の銀行では両替手数料を相次いで値上げしていますから、可能な限りネットで用事を済ませ、決済もキャッシュレスにした方が手数料を抑えることができます。
店舗の様子も激変しつつあります。三井住友銀行や三菱UFJ銀行では、一部店舗で予約性の導入を進めています。これまで銀行の店舗というのは便利なところにあり、外出のついでに行くところでしたが、これからは資産運用の相談や住宅ローンなど、用事がある時にしか行かない所になりそうです。
店舗が減るということはATMも減るということですから、現金での決済はますます不利になります。キャッシュレス化について賛否両論がありますが、手数料貧乏にならないためにも、キャッシュレスに移行した方がよいと筆者は考えます。
この流れが進んだ場合、口座の残高が一定金額以下になったり、取引が極端に少ない場合には口座維持手数料を徴収することになるでしょう。海外では残高が一定金額以下の場合、手数料を徴収するのはごく当たり前の商習慣です。三菱UFJ銀行は、2年間取引がない口座について年間1200円程度の口座維持手数料を徴収する方針と報道されています。
銀行としては、とにかくネットに移行して欲しいということになるわけですが、ネットがメインになるとセキュリティが気になる人も多いと思います。確かにセキュリティの不安はありますが、これはネットだけの問題ではありません。通帳は落としてしまうとアウトですから、実はセキュリティ上、大きな問題がありました。ネットは危険で、通帳だと安心というのは、あくまで慣習によるイメージでしかないと考えた方がよいでしょう。
日本では銀行のサービスはタダという感覚が強いのですが、本来、銀行というのは手数料なしでは成立しない業態です。これまで手数料が限りなく安かったのは、日本独特の商慣行が原因であり、そのお金は、社会の別の部分で負担していたに過ぎません。
手数料が上がってしまうことを喜ぶ人はいませんが、これは避けられない動きと考えるべきです。口座維持手数料が発生しないようできるだけ銀行口座を集約し、不要な口座は解約した方がよさそうです。その上でネット取引に移行して手数料を抑えるというのが賢い選択でしょう。
前回記事「菅政権の携帯料金値引き要請、もし実現したら起こる怖いこと」はこちら>>
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