【質問7】風邪や新型コロナウイルスにも効くのですか?
インフルエンザワクチンによって体で作られる抗体は、インフルエンザウイルスにのみ有効な抗体であり、残念ながら他のウイルスには無効です。
インフルエンザウイルスと風邪のウイルス、あるいは新型コロナウイルスは全く異なる殻を持つ異なるウイルスです。別のウイルスの感染予防をするためには、それぞれに対するワクチンが必要になるのです。
実際、現在進行形で新型コロナウイルスのワクチンが熱心に研究されていますよね。
【質問8】副作用はないのですか?
副作用の可能性はあります。副作用の報告のない薬やワクチンは存在しません。しかし、そのほとんどがとても軽いものです。
主なものとしては、注射部位の赤みや痛み、微熱といったものです。微熱や痛みが辛い場合には、解熱剤や鎮痛薬を使って対応することが可能です。
重大な副作用としては、アレルギー反応が挙げられます。これは、100万人に1.5人程度の割合で生じる可能性があると報告されています(参考12)。
また、ギランバレー症候群と呼ばれる神経の病気を発症する確率がわずかに増えるのではと示唆する報告もあります。これもやはり100万人に1.5人程度の割合ではないかと言われています(参考13)。
これらはもちろん無視のできない副作用であるものの、とてもまれな事象であり、予防接種を回避することによるリスクと比較すると圧倒的に後者の方が大きいことから、副作用のリスクを認識しつつも、その接種が推奨されています。
【質問9】卵から作ると聞いたのですが、卵アレルギーでも打っていいのですか?
インフルエンザワクチンの製造過程で鶏卵由来の成分を用いるので、ワクチンには鶏卵のタンパク質が多少含まれます。しかし、時代とともにその含有量自体も減り、現在ではインフルエンザワクチンで卵アレルギーを発症するリスクは限りなくゼロに近いと考えられています。
実際に4000人以上の卵アレルギーの方にワクチンを接種して観察した研究でも、ワクチンに対する重大なアレルギーは1人も見られなかったことを報告しています(参考14)。
また一方で、卵アレルギーを持つ人の中には喘息などの持病を持つ方も多く、そのような方はインフルエンザの重症化リスクが高く、インフルエンザワクチンを打たないことのデメリットが大きくなります。
これらのことから、現在米国では仮に重篤な卵アレルギーの既往があっても、インフルエンザワクチンを接種することが推奨されています。
一方、日本では今のところ「重篤なアナフィラキシーショックなどを起こしたことがなければ」卵アレルギーがあっても接種が可能とされており、心配なく接種を受けることが可能です。
もちろん、卵アレルギーがあってご心配という方は、ぜひかかりつけの医師とご相談ください。
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この記事は2020年10月27日に配信した人気記事の再掲載です。
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