大塚家具はそれほど大きな企業ではありませんが、ブランドとしての知名度が高かったことや、一連のお家騒動があまりにもドラマ的な展開だったことから、同社の家具や株取引に関心のない人も含めて、耳目を集めました。

世の中ではいつしか久美子氏のことを「かぐや姫(家具屋姫)」などと呼ぶようになりましたが、久美子氏の知的でクールな風貌から、いかにも月世界から来たようなイメージだったことも、この呼び名を定着させる要因となったかもしれません。

久美子氏の経営手法については、様々な批判があります。経営者として稚拙な面があったことは事実ですが、業績悪化自体は不可抗力という部分が大きいと考えています。

仮に勝久氏の手法を継承していれば、もう少し粘ることはできたはずですが、そもそも勝久氏が辞任したのは、従来の販売手法が時代に合わなくなったからです。

大塚家具の久美子社長が辞任。彼女は何に負けたのか_img0
2015年、久美子社長が陣頭指揮を執った「お詫びセール」開催時の店頭フロア。写真:Natsuki Sakai/アフロ

株式を上場している以上、成長を続けることは義務となります。もしそうした経営を望まないのであれば、上場した株式を買い戻し、上場廃止にするのがスジです。上場を続ける場合、利益成長は必須ですが、残念なことに、大塚家具が得意としてきた中級家具の分野は市場が急速に縮小しています。

 

家具の分野には、輸入品を中心した高級家具市場と、大塚家具などが該当する中級家具市場、そしてニトリやイケアが得意とする大衆向け家具市場の3つがあります。高級家具市場は、富裕層がターゲットですから、市場は大きくありません。

昭和から平成初期の時代までは、中間層が背伸びをして、高めの中級家具(ごく普通の生活をしている人から見れば、大塚家具も十分に高級ですが、市場の区分は中級となります)を購入するケースは少なくありませんでした。ところが、近年は日本人の賃金が下がり、富裕層向けの高級家具と、ニトリやイケアに代表される大衆向け家具の二極分化が進んでいました。

ニトリは巨大企業であり、相当な財力がありますから、大塚家具がこのマーケットに直接、乗り込むことは得策ではありません。結局のところ、大塚家具の位置付けが中途半端になり、販売が伸び悩んだものと考えられます。

大きな判断ミスがあるとするならば、成長を諦め、非上場化を目指すという道を選べなかったことかもしれませんが、父親との経営権をめぐる闘争で機関投資家を味方につけてしまった以上、非上場化を選択することは事実上、不可能だったと思われます。

タイミングが悪く、気の毒な面もありますが、経営は結果がすべてです。ただ、久美子氏は家業を失ってしまったものの、経営者としては相当な経験を積んだはずですから、再び実業家として活躍できる場面も出てくるのではないでしょうか。

前回記事「「栃木県最下位に知事が抗議」から考えるランキングの本当に賢い使い方」はこちら>>

 
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