菅政権「構造改革」路線の勝算は?初動2カ月から考察_img0
10月、初外遊で東南アジアに向かう菅首相夫妻。 写真:つのだよしお/アフロ

菅義偉首相が誕生してから約2カ月が経過し、政権の輪郭もある程度、ハッキリしてきました。菅政権は何を目指しているのか、菅政権の誕生で来年以降の日本はどうなるのか考えてみたいと思います。

 

菅氏は基本的に実務型の政治家と言われています。政治家には、大きなビジョンや方向性を示すことで国民をリードするという役割と、各政策を理解し、それを遂行していくという役割の2つが求められています。両方とも重要ですが、人には得意不得意がありますから、政治家によってどちらの色が濃いのかという特徴が表われます。

ビジョンを示す政治家としてよく知られているのは小泉純一郎元首相でしょう。小泉氏は「自民党をぶっ壊す」「構造改革」という分かりやすいフレーズで大きなビジョンを示し、実務はブレーンに任せるというスタンスでした。一方、菅氏は、個別の政策に精通しており、実務で勝負する傾向が顕著です。

ちなみに、菅氏は小泉内閣において、総務副大臣として構造改革の実務を担当していましたし、続く、第1次安倍内閣では総務大臣として、第2次安倍内閣では官房長官として仕事をしていました。いずれも縁の下の力持ちという役割ですから、菅氏の特徴がよく出ていると思います。

菅氏が首相に就任して最初に打ち出したのは、デジタル庁の創設と携帯電話料金の引き下げでした。この2つはまったく無関係というわけではありませんが、個別の政策であり、大きなビジョンに基づいて発案されたものではありません。むしろ、デジタル庁の創設はマイナンバー制度に関連していることから総務省との関連が深く、携帯電話事業を担当するのも総務省です。菅氏は、副大臣や大臣を歴任し、自身がよく知る役所である総務省を起点に改革案を出したと考えた方が自然でしょう。

加えて菅氏は、地方銀行の再編や中小企業政策の見直しなど、地方経済に関する改革プランも表明しています。地方銀行や中小企業の再編は、実は小泉政権時代から議論されてきたテーマです。デジタル庁の創設はIT化で行政組織をスリム化するという目的がありますし、携帯電話の料金引き下げは、各社のサービス競争を促すという狙いがあり、構造改革的なテーマといってよいものです。

先ほど筆者は、菅氏は大きなビジョンというよりは、個別政策を中心に政権を運営するタイプだと述べましたが、あえて菅氏のビジョンは何かと問われれば、小泉氏が提唱した構造改革路線の継承ということになるでしょう。

 
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