鬼にも寄り添う炭治郎という存在


主人公の炭治郎は嗅覚が非常に優れており、相手の感情すら嗅ぎ取ることができるという特徴を持っています。もちろん、鬼の感情にもこれは適用されます。

 

上記した累が死ぬ間際にも、累が纏う後悔、そして悲しみの匂いを嗅ぎ取り、消えゆく累のそばに寄り添います。この優しさに触れることにより、鬼たちは人を殺したことを悔い、人間であった頃に想いを馳せるのです。

炭治郎ら鬼殺隊 vs. 人を殺める鬼たち。わかりやすい善と悪を描いた勧善懲悪作品に見える「鬼滅の刃」ですが、実はそうではない。悪には理由があり、その悪に正面から向き合う勇気と強さ、そして、その悪の裏側にある悲しみに寄り添う優しさを学べる作品だと感じました。

主人公の成長を描く物語、個性豊かなキャラクター、迫力あるバトルシーン、ギャグ・シリアスシーンの緩急ついた構成ももちろんですが、人の心の奥底にある“何か”を大きく震わせる。それが「鬼滅の刃」に人々が夢中になる理由なのではないでしょうか。

その心の揺れ動くさまを、ぜひ漫画で、アニメで、劇場で確かめてください。
 

※禰豆子の「禰」は「ネ+爾」が正しい表記となります。

©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
※画像はアニメ公式サイトより
文/米田果織
 

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