トランプ大統領が選挙の結果をなかなか受け入れないという異常事態が続いています。トランプ氏は11月15日、「バイデン氏が不正によって勝った」とツイートし、不正があったと留保しつつも、選挙で負けたことについては認めるなど、徐々に軌道修正を図っているようにも見えます。しかしながら、ここまで自身の敗北を認めないというのは、前代未聞の出来事といってよいでしょう。
米国ではトランプ氏を支持していたメディアや身内の共和党からもトランプ氏の行動を批判する声が出ていますが、トランプ氏の一連の行動は、単に「恥ずかしいこと」であるばかりでなく、民主主義のシステムに悪影響を及ぼす可能性があり、看過されるべきものではありません。
この話は、上場企業のトップが自らの進退について決断することや株主総会の透明性にも通じる話であり、日本人にとっても無関係とは言えないテーマです。
説明するまでもありませんが、日本や米国、欧州各国は民主主義の制度を採用しています。民主主義というのは、国家の主権者が国民であるという制度です。国家のリーダーは国民の意思を体現する人でなければいけませんから、それを示すために選挙があります。
選挙の際には、独立して選挙を管理する選挙管理委員会と呼ばれる組織(あるいはそれに準じる組織)が投票結果などを集計します。しかしながら、国家には国家以上の力を持つ組織は存在しませんから、理屈上、政府機関が圧力をかけて集計結果を誤魔化すことは不可能ではありません。
実際、アジアやアフリカなどでは、表面的には民主主義を装っていても、実際には独裁国家となっており、選挙結果が恣意的に操作されるケースはザラにあります。
つまり、民主主義というのは、非常に危ういバランスの上に成り立っているものなのです。
最終的に選挙が正しく行われるのかを担保しているのは、権力者が選挙に介入したり、妨害することはしないだろうという国民からの信頼しかありません。ここで候補者が選挙結果が不正だと言い始めてしまうと、信頼をベースにした制度の根幹が揺らいでしまうのです。
トランプ陣営は訴訟を起こしていますから、一部の人は司法が判断すればよいと思ったことでしょう。しかし、選挙の結果を司法に委ねるというのも、実は非常に危険な行為です。
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