7日に勝利宣言したジョー・バイデン候補と、妻のジル・バイデン。写真:ロイター/アフロ

米大統領選で民主党のバイデン候補の勝利が確実となりました。バイデン政権はトランプ政権と正反対の政策を掲げていますから、2021年には大きな変化が訪れそうです。

 

バイデン氏が掲げる経済政策でもっともインパクトが大きいのは、やはり再生可能エネルギーへの巨額投資でしょう。同氏は、再生可能エネルギー分野に4年間で2兆ドルもの投資を行う方針を表明しています。トランプ政権は基本的に脱石油に否定的でしたから、これは極めて大きな方向転換と言えます。

これまでの国際社会は、欧州各国が中心となり、脱石油と再生可能エネルギーへのシフトを進める方向性で議論を進めてきました。

当初、中国は新興国ということで、温暖化ガスの排出量削減には消極的でしたが、ここ数年、中国の技術力がめざましく向上したことから同国は自信を深め、9月には習近平国家主席が2060年までに温暖化ガスの排出量をゼロにする方針を表明しています。バイデン政権の誕生で、米国も脱石油に舵を切ることになりますから、これで米欧中という3極がすべて同じ方向を向くことになります。

今年9月に石油メジャー(国際石油資本)の1社である英BPが、2050年には4割以上が再生可能エネルギーになるという衝撃的なレポートを公表し、大きな話題となりましたが、米国の脱石油シフトはこの動きをさらに加速するでしょう。日本では、脱石油について理想論と考えている人が多いのですが、近年、関連分野におけるイノベーションが相次いでおり、再生可能エネルギーへのシフトはもはや時間の問題です。

全世界が脱石油に舵を切った場合、もっとも大きな影響を受けるのが自動車業界であることは間違いありません。日本の自動車メーカーは一部を除いて電気自動車(EV)には消極的でしたが、もう悠長なことは言っていられません。来年以降、各社は本格的にEVにシフトすることになるでしょう。自動車業界にとっては大きな試練ですが、一方、日本にはEV化の恩恵を受ける部品メーカーもたくさんあります。モーターや制御機器、電装系の部品を製造する企業の業績には弾みがつきそうです。

ではバイデン政権の誕生で、世界の景気や株式市場にはどのような影響が及ぶでしょうか。

基本的に筆者は米国の経済や株価は堅調に推移すると見ています(コロナ次第という面がありますが、とりあえずこの話は横に置いておきます)。その理由は、バイデン氏が大規模な財政出動を行い、中間層や低所得層に対して富を再配分すると主張しているからです。

 
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