発達障害と診断された子どもをもつ親だけでなく、普段どのように子どもと向き合えばいいのか悩んでいるママ・パパへのヒントが詰まった一冊が『発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉かけ』(監修:医学博士・平岩幹男さん)です。著者のshizuさんは、自閉症と診断された息子さんをABA(応用行動分析)という療育法を使って“ほめて伸ばす”育て方を実践しましたが、はじめから全てがうまくいったわけではなく、日々試行錯誤の繰り返しだったことを本書で明かしています。自閉症療育アドバイザーとしてたくさんの親子を目の当たりにしてきたからこそ、何より自身が困難を経験してきたからこそ伝えたい、子育ての壁にぶつかる親たちへのアドバイスを、本書から特別に一部抜粋してご紹介します。

 

私が息子の療育や、現在療育アドバイザーとして支援しているさまざまな親子との関わりのなかで試行錯誤してきた体験を踏まえながら、子どもの療育に悪戦苦闘している人、あるいはこれから療育を始めようとしている人への個人的なメッセージをまとめてみました。

 

① 親が抱くマイナスの感情は必ず子どもに伝わる


自分の思い通りにならない長男の空の行動に対してイライラして、「空がいい子にしていたら、私は怒らなくてすむのに……」と、被害者意識を募らせていた時期がありました。

でも、ずっとこんな気持ちでいたら、マイナス思考がさらなるマイナス思考を呼び込む「マイナス思考スパイラル」に陥ります。こうなると、そこから簡単には脱け出せなくなってしまうのです。

さらに悲しいことに、親が子どもに対して否定的な感情を抱いていたら、それは確実に子どもに伝わります。

「人の行動は環境(周りの人の行動も含む)との相互作用によって形づくられる」というのがABAの基本的な考え方です。つまり、自分の行動が相手の不適切な行動を引き起こしている可能性がある、ということです。子どもがイライラしているときには、自分の態度がそのイライラの原因になっていないか、振り返ってみることも必要なのです。

私はこの考え方に共感し、自分の視点を変えることで、マイナス思考スパイラルから脱け出すことができました。

② 将来を不安に思うよりいまを大切に


同じ状況に対しても、視点を変えることでまったく違った受けとめ方ができる場合があります。短所に見える子どもの性格も、たとえば、頑固→意志が強い、落ち着きがない→好奇心が旺盛、怒りっぽい→感情が豊か、反抗的→自分の意志を持っている、と置き換えることができます。

それと同時に、「○○ができない」「○○するところがいや」などと子どもの悪いところにばかり目を向けるのではなく、「笑顔がかわいい」「元気でよく食べる」など、いい面に目を向けるようにしていくと、イライラする回数が減ってきます。

子どもの行動に対するイライラだけでなく、先行きに対する不安も、考え始めるとさらに別の不安を呼び込み、マイナス思考スパイラルに陥るもとになりがちです。将来起こるかどうかわからないことを、いま考えても無駄です。それよりも、いまできることに専念しましょう。

:平岩さんからひとこと:
いまできないことに焦らないで、いまできることをひとつずつ積み上げていく。これを「スモールステップ」と言います。誰でも一度に百歩は進めません。ひとつひとつの積み重ねの先に将来があります。