③ いまの姿が子どものすべてではない


私は幼いころ、家では普通に話すことができるのに幼稚園ではおしゃべりをしないという状態が1年半ほど続いたことがあります。これは「場面かんもく(選択性かんもく症)」と呼ばれる現象で、学校や幼稚園にいるときなど特定の場所や状況におかれると不安になってしまい、まったく話すことができなくなるのです。

【発達障害の子をもつ親へ】その苦しさを笑顔に変える4つのアドバイス_img0
 

友達と関わることも恐くなり、教室内の掃除用具入れの中に隠れ、ドアの隙間からみんなの行動をじっと観察することもありました。その当時、母は先生から、「この子は将来心配です」と言われていたようです。

 

それを聞いて危機感を募らせた母は、もともと人前に出るのが苦手だったにもかかわらず、「私が変われば娘も変わることができるかもしれない」と一大決心し、幼稚園の保護者会の会長に立候補したのです。そのころの母の活動的だった姿は、いまも私の目に鮮やかに焼き付いています。

その姿を見たことがプラスに作用したのでしょう。精神的に安定してきた私は、小学生になると重い場面かんもくの状態から脱け出すことができました。そして、いまではあのときの母のように、大勢の人の前で講演をするまでになりました。

現在子どものことで悩んでいる人たちには、「いまの姿が子どものすべてではない」ということを、お守り代わりに心のどこかにとどめておいて欲しいのです。

コツコツと働きかけをしていけば、うれしい成長がきっとあります。もしも私の母が、あのとき先生から言われたことに意気消沈し、悲観した毎日を過ごしていたら、おそらくいまの私の姿はなかったでしょう。

親のオロオロした態度や、悲観、焦りといった感情を、子どもは敏感にキャッチするものです。いまの子どもの姿だけを見て将来を悲観せず、子どもの可能性を信じて楽しく働きかけていきましょう。子どもが大好きなのは、お父さんやお母さんの泣き顔、怒り顔ではなく、笑顔や前向きに頑張る姿なのです。

:平岩さんからひとこと:
悩んだりへこんだりしない人はいません。でも、悩んだりへこんだりした状態で子どもに接すると、うまくいかなくなりがちです。悩んだりへこんだりした自分を責めるのではなく、切り替えて自分にごほうび……も大切です。